イチゴのケーキ
(ジュリリモ)
「ああもう!ジュリアス様ったら!!」
腰に手を当てながら、アンジェリークはプリプリとジュリアスを睨み付けた。
「す、済まない・・・」
卵のボウルをひっくり返してしまったジュリアスが、しどろもどろで謝罪する。
二人の立場は、いつもと逆になっていた。
青い瞳の女王陛下主催のクリスマスパーティ。
ケーキの準備を申し付かったのは、アンジェリークと、何故かジュリアスであった。
こういうお祭り騒ぎの際は、からきし役に立てないため(自分でもそれは自覚している)、卵やらクリームやらを泡立てる要員としてケーキ作りに組み込まれたのだと、ジュリアスは認識していたのだが。
役に立つどころか、どうやら邪魔になっているらしい・・・。
「ジュリアス様は、座ってお茶でも飲んでいてください」
調理場のコンロで湯を沸かし、アンジェリークがジュリアスのためにお茶を淹れてくれる。
ジュリアスは、白いカップを手に取った。
コーヒー党のジュリアスであるが、アンジェリークの淹れた紅茶ばかりは非常に美味に感じられ、お気に入りである。
愛という隠し味が入っているからであろうか・・・?
などと、自称愛の伝道師な守護聖のような事を、ジュリアスは考えた。
ジュリアスの視線の先で、アンジェリークはパタパタと動き回っている。
先ほどジュリアスが失敗した過程に再チャレンジしているようだ。
小気味良い音を立てながら、アンジェリークは泡立て器を動かしている。
「アンジェリーク、何か・・・」
「はい、ジュリアス様は、大人しく座っていてくださいね〜v」
手伝おうとしたところを遮られ、ジュリアスは憮然とした。
大人しくアンジェリークの様子を見守っていると、予熱したオーブンにアンジェリークがケーキ型を放り込んだ。
スポンジの準備は完了したらしい。
それから白いクリームをボウルに入れて、軽快に泡立て始めた。
しばらくの後。
「ジュリアス様〜v」
手持ち無沙汰のところを呼ばれ、ジュリアスはイソイソと立ち上がった。
「何だ、アンジェリーク?私に何か出来ることがあるか??」
「生クリームの味見をしてくださいvvv」
その言葉に、ジュリアスは脱力した。
仮にも首座の守護聖である自分が、生クリームの味見しかすることがないとは・・・!!
それは、非常に嘆かわしい事実であった・・・。
アンジェリークがスプーンに軽くクリームを掬い取る。
クリームが乗ったスプーンを、ジュリアスは口に入れた。
「いかがですか??」
「甘すぎず、良い味だ」
「じゃあ、これ以上お砂糖を加えなくてもいいですね〜」
ボウルを置いて、アンジェリークがクスリと笑った。
「あら、ジュリアス様。唇の端に、クリームが付いてますよ」
そんなに行儀の悪い味見をしたのかと、ジュリアスは一瞬、オタオタとした。
アンジェリークの愛らしい顔が近づいてきて、更に焦っていると、柔らかい何かがジュリアスの唇の端に触れた。
「はい、綺麗になりました〜vvv」
アンジェリークがジュリアスのクリームを舐めて取ったのだと分かり、ジュリアスは固まった。
「それじゃあ、ジュリアス様。イチゴを準備しましたので、洗ってヘタを取っていただけますか?」
「・・・・・・・・・」
「ジュリアス様・・・??」
「・・・・・・・・・」
ジュリアスは、バタリと倒れた。
「キャー!?ジュリアス様、どうなさったんですか!?誰か、ジュリアス様が〜!!!」
アンジェリークがクリームのボウルを抱えたまま、バタバタとキッチンから飛び出していく。
その声を聞きながら、ジュリアスの意識が途切れた。
「う・・・」
パチリ、と目を開けると、見慣れた天井。
どうやら、私邸の寝室に運び込まれたらしい。
「ジュリアス様、大丈夫ですか??私が変なコトをしてしまったから・・・ごめんなさいっ!!」
泣き出しそうな顔で、アンジェリークが項垂れた。
「そなたのせいではない。全ては、私の未熟さから起こった事」
言いながら、ジュリアスはハッとベッドの上に上体を起こした。
「パーティはどうなったのだ!?」
「ジュリアス様が気を失っていらっしゃる間に、終わりました」
ズガーンと、ジュリアスは衝撃を受けた。
私がいない間に終わった、私がいない間に終わった、私が・・・(以下略)。
「何事もなく終わったので、大丈夫ですよ」
その言葉に、更にジュリアスはダメージを受け、ベッドに突っ伏した。
「ジュリアス様、ご気分が悪いんですか??」
心配そうな声に、ジュリアスは顔を上げ、ぎこちなくアンジェリークに笑いかけた。
「だ、大丈夫だ・・・!」
「それならいいんですけれど・・・」
アンジェリークは小首を傾げ、ジュリアスに問いかけた。
「ジュリアス様、もしよろしければ、ケーキを召し上がりませんか?せっかくお手伝いしてくださったんですもの」
「・・・いただこうか・・・」
アンジェリークがガラガラとワゴンを引いてきた。
ちょこんとケーキの皿が乗っている。
このケーキ作りでもほとんど役に立てなかったのだと思うと、ジュリアスは自己嫌悪の感に苛まれた。
「ジュリアス様のお好きなエスプレッソを淹れますので、少しお待ちくださいね!!」
ジュリアスを慰めようというのか、エスプレッソを作成するというアンジェリークの言葉に、感動する。
そんな中、アンジェリークは、エスプレッソメーカーと格闘していた。
よっぽど紅茶で構わないと言おうと思ったが、アンジェリークの頑張りを無にするのもどうかと思い、言葉を飲み込んだ。
しばらくの後、アンジェリークが何かをやり遂げた表情で、ジュリアスを振り向いた。
「お待たせしました、ジュリアス様!!」
小さなカップに、薫り高いエスプレッソが注がれた。
一口飲んで癒された気持ちになっているジュリアスに、
「はい、ジュリアス様。あーんしてくださいvvv」
アンジェリークがケーキを乗せたフォークを差し出してきた。
思わずエスプレッソを噴出しそうになったジュリアスだが、落ち着けと自分に言い聞かせつつエスプレッソを飲み込み、口を開けた。
「美味しいですか??」
「うむ。なかなか美味だな」
答えるとアンジェリークは嬉しそうに笑い、再びケーキのフォークをジュリアスに差し出した。
「たくさん食べてくださいねv」
ジュリアスはアンジェリークの差し出すフォークからクリームたっぷりのケーキをぱくりと口に入れ、ほのぼの気分に浸った。
〜 END 〜
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ジュリリモで「イチゴのケーキ」でございます。
リモちゃんに振り回されているジュリ様が好物の管理人の趣味に合わせて、
天然なリモちゃんと、ちょっぴり初心なジュリアス様でございました(笑)vvv
ジュリリモにポチリしてくださった皆様へ捧げます。
イメージと違っていたらスミマセン。
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