冷えた指を舐めて、
(サイゼロ:44)
*注意:すっごくベッタベタなので、苦手な方はお逃げ下さい*




 大きな音を立てて、部屋のドアが開いた。
 漆黒のマントを翻しながら、男が中に入って来る。
 高く、靴音が響き。
 マントが孕んでいた冷気がひんやりとハインリヒの頬を撫でた。
 そして、そこはかとなく漂う血の香。
 眉をひそめながら振り返ると、男はぞんざいに手近なソファに腰を下ろしたところだった。
「アルベルト」
 手招かれて側近く歩み寄ると、男の手がスイと伸ばされて。
 先程、頬に触れた風よりも冷ややかな感触。
「冷たいな・・・」
 呟きながら、褐色の指先を包み込むようにして握り締めた。
 握り締めた手を、視界の先に持って行き、両手で握り締めてもなお。
 その手は、冷え冷えとしていた。
 しばし、ハインリヒは考え込み。
「アルベルト・・・?」
 業を煮やしたように再度名前を呼ばれたタイミングで、男の人差し指をパクリと咥えた。
「うわっ!?な、何だアルベルト!?」
 男にしては珍しい、驚きの声。
 してやったり、な気持ちで、ハインリヒは冷たい指先を口内に含み、丁寧に舐めていく。
「アルベルト・・・!」
「・・・なんら?」
「お前は一体、何をしている?」
「ほまへのうびがつめらいから、あららめてやっれるんら(お前の指が冷たいから温めてやってるんだ)」
 答えると、男の瞳が細くなり、紅い光が優しくハインリヒを見つめた。
「・・・そうか・・・。それは礼を言うべきなのかな?」
 ペロペロと一本ずつ、ゆっくりと口の中で温めていく。
 男は大人しくされるがままになっていた。
「アルベルト」
「ふん(うん)??」
「そうしていると、お前はまるで、毛並みの良い銀色の猫のように見えるぞ」
「ほうか(そうか)?」
「そうだ」
 猫に見えるというのなら。
 ハインリヒの心に、悪戯心が芽生えた。
 男が座っているソファの上に転がり、猫のように丸まって、その膝に頬を摺り寄せた。
「お前は全く・・・」
 呆れたような声が、頭上から降ってくる。
 済ました顔で、男に向かってあーんと口を開けて見せると。
 男は肩を竦めてから、褐色の指を差し出した。
 ペロリと、その指を舐める。
「楽しいか、アルベルト・・・?」
「ん!」
 膝の上に乗ったままで答えると、男の空いている方の手が、ハインリヒの髪をクシャリと撫でた。
 オレが猫だったら、ゴロゴロと喉を鳴らすところなんだがな・・・。
 そんな事を考えながら。
「温まったか?」
 男の指から唇を離して。
 ハインリヒは腕を伸ばし、甘えるようにして、ギュッと男の腰に抱きついた。



  〜 END 〜




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原稿を終えたばかりで、まだラブラブ44モードが残っているうちに!
と、書いた話です(笑)。
リクを下さったB様!ありがとうございました〜。
こんな話で申し訳ありません(土下座)!!
書いた本人だけが楽しい、ベッタベタの話でございました(短いけれど)。
でも書いてて楽しかったよ〜!!
と叫びながら、逃げ出します。







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