きみが、好きです
(PAPUWA:キングン)
君の大きな手の平が、僕の髪を優しく撫でてくれる。 それがとても気持ち良くて、僕は瞳を細めて、キュウと君の背中に腕を回した。 「お前の髪は、綺麗だな・・・。グンマ」 僕はそうは思ってなかった。 君の、黄金に月の光を溶け込ませたような落ち着いた髪の色の方がずっと綺麗だと思うし、どうせなら、ミヤギみたいな髪の色が好き。 落ち着いてもいない、明るいというには中途半端な髪の色。 キライ、キライ。 僕は、自分のことがあまり好きではなかった。 一族にとって、何の役にも立たない存在。 自分の事をそう思っていたし、回りだってそう思ってた。 女の子と間違われるような姿形も嫌い。覇気のない性格も嫌い。 シンちゃんのようだったら・・・。 ずっと、そう思っていた。 高松は僕を守ってくれたけれど、きっとそれは、僕がルーザーお父様の子供だからだと、心のどこかで考えてた。 本当は、もっとロクでもない理由からだったけれど。 それでも高松は僕を可愛がってくれたし、僕も高松が大好きだった。 高松は僕を可愛らしいと賛辞するのに言葉を惜しまなかったけれど、大好きな高松にそう言ってもらってもなお。 僕は、自分が嫌いだった。 「僕の髪なんか、全然キレイじゃないよ」 反論して、見上げると。 藍い瞳が丸くなった。 そして、 「どうしてそんな事を言うんだ?」 戸惑いを含んだ声が問い掛けてきた。 「同じ金なら、君やミヤギの髪の方がキレイでしょう?」 そう問うと、困ったような顔をして。 「お前は、自分の事が嫌いなのか・・・?」 僕は、ニッコリとキミに笑いかける。 言う事を何でも聞いてやりたくなるような笑い方をすると、いつか誰かに言われた事があるけれど。 けれども、僕は自分が・・・。 「うん。キライ」 君が、手を上げる。 (叩かれる・・・?) そう思って、キュッと目を閉じたら。 ペチリ、と、頬に君の手の平が当たった。 「そんな事を言うもんじゃない」 ごくごく真面目な顔で、君は僕を諭すように言う。 「少なくとも俺は、お前が好きだぞ。お前の蜂蜜のようなブロンドは、柔らかくて触り心地が良くて好きだ。瞳の蒼は美しいし、肌の白さは雪を思わせて好きだ」 カーッと、自分の頬が赤くなるのが分かった。 でも僕は・・・。 「お前の強さも、俺は好きだぞ」 強い、僕が・・・? 「いつでも笑っていられる強さ。俺は、お前のそんなところが好きだ。お前の笑顔は、周りを力付けてくれる」 「キンちゃん、もうやめて・・・!!」 「何故だ?俺はまだまだ、お前の好きなところを挙げられるぞ?いいか、俺はお前の美点をいくらでも挙げることが出来る」 「もういいって・・・!」 重ねて言うと、キミは不満そうな顔で、それでも口を噤んだ。 「ゴメンね、キンちゃん・・・」 ポスンと、広い胸に顔を押し当てながら呟いた。 自分が嫌いだ嫌いだと思って。いつも何かから逃げている、弱い従兄弟でゴメン。 「どうしてお前が謝る必要がある?」 優しい腕が、抱きしめてくれる。 君に抱きしめてもらうと、僕はとても安心できる。 「グンマ・・・俺はお前が好きだぞ。俺が好きなお前なのに、お前は自分を嫌いだというのか?」 腕の中で、微かに身じろぐと。 「俺がお前を好きなのだから、お前も自分を好きになった方が良い」 ・・・なんて理屈なの・・・。 「何それ・・・?」 胸の中でクスクスと笑うと、心外だと言わんばかりに君はブツブツと呟いた。 「俺が好きなお前が、自分を嫌いだといえば、俺が悲しくなるだろう・・・?」 君は、暖かい。 広い胸の中は勿論、言葉も、心も。 「ゴメンね。僕、もう少し、自分を好きになっってみるよ」 くしゃくしゃと、髪をかき混ぜられる。 その手付きが優しくて、僕は嬉しくなった。 救われてるんだよ、君に。 君はいつも暖かく僕を包んでくれる。 僕は君に導かれて、少しずつ、強くなっていく。 君が、好きです。 僕がもう少し自分を好きになれたら。 自分に自信が持てるようになったら。 君に伝えてもいいのかな・・・? 『君が、好きです』 今は、言えないけれど。 言葉の変わりに、大きく背伸びをして。 チュ、と君の頬にキス。 「グンマ・・・!?」 「お礼のキスだよv」 ワタワタとする君に、ニッコリと微笑みかける。 おろおろする仕草も愛しくて。 僕はやっぱり・・・。 君が、好きです。 〜 END 〜 |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
グンマ様は本当にお可愛らしい方ですが、
コンプレックスも大分持っているのでは・・・、と、常々思っておりまして。
ちょっとその部分を書いてみたくなった次第です。
あー、あんまり甘くなくてスミマセン(汗)。
訳の分からない作品でスミマセン。
ブラウザを閉じてお戻りください。