<HAPPY!?24デー>

24デーその13:イイ気分




 パスタもワインも美味だった。
 フランソワーズの秘蔵のパスタソース。
 これを無断使用してしまった己(というかジェット)の罪深さに恐れおののきながらも。
 ハインリヒはなんとか、この食事の一時を楽しもうとしていた。
 美味しい物を楽しむことが出来ない。
 それは、美味しい物に対する冒涜だとハインリヒは強く思った。
 この後に、愛するチーズケーキも控えているのだ。
(アレは晩飯のデザートか・・・??)
 そんな事を真剣に考えながらも。
(そうだ!パスタソースは正直に謝って、代替品で勘弁してもらおう・・・)
 そんなナイスな考えも頭に浮かび、ハインリヒは少し、心が軽くなるのを感じた。
 ・・・口当たりの良いワインが、程よく回ってきたのかも知れない。
 いい気分になってくると、もうフランソワーズのパスタソースの事などは、頭の片隅に押しやられてしまった。
 ワイングラスを傾けながら、ハインリヒはジェットをじっと見つめた。

 長い長い歳月を、一緒に歩いてきた。
 辛い時も、嬉しい時も。
 いつも側にいてくれて、いつでも支えてくれた。
 自分にとって、とても大切な人物だ。
 彼が、好きだ。
 真っ直ぐなところ。
 包み込むような優しさ。

「ジェット・・・」
 名前を呼ぶと、ジェットは少し困ったような顔をして笑った。
「何?そんなにじっと見つめられると、照れるんだけど?」



 スパゲティもワインも最高だった。
 しかも、ワインを出してきたのはハインリヒの方だ。
 普段なら絶対に、そんなコトはしない。
(ハインリヒも二人っきりが嬉しいんだな♪)
 そんなことを思いながら、ジェットは美味しくワイングラスを空けていった。
 目の前のハインリヒはキレイだし、酒は美味いしで、ジェットはご機嫌だった。

 しかし。
 ハインリヒがいつになくハイペースでクイクイとグラスを空けるのが、気になる。
 白い頬には赤みが差し、瞳がトロンとしてきて、かなりのセクシーさだ。
(うわぁ。目のやり場に困るんだけど・・・)
 思わず、あらぬ方向などに視線を飛ばしてみるジェットだったが、ハインリヒがじっと自分を見つめるので、気もそぞろになる。

 ハインリヒが、カタリとワイングラスをテーブルの上に置き、頬杖を付いた。
「ジェット・・・」
 名前を、呼ばれた。
 クリスタルの瞳が、まるで濡れたような光を放った。
 その表情が、アノ時の顔を髣髴とさせ、ジェットは困った。
(ダメだ、我慢がきかなくなりそう・・・)
 冗談に紛らわしてしまおうと、ジェットは笑いながら言った。
「何?そんなにじっと見つめられると、照れるんだけど?」



 ハインリヒは、立ち上がった。
 そして、ジェットに向かって歩を進める。
「おいおい!ハインリヒ、足元フラついてるって!大丈夫・・・?」
 ジェットの言葉が終わらないうちに、クラリと眩暈がして、身体がよろける。
「ハインリヒ・・・!」
 支えてくれたジェットの腕は、やっぱり優しくて。
 ジェットを見上げて、ハインリヒは笑った。
「ありがとう、ジェット・・・」
「え・・・?」
 そのまま、ジェットの首筋に腕を回して、ギュッと抱きしめた。
(温かいな・・・)
 そう思い、ハインリヒはそのまま、ジェットの身体に凭れ掛かった。
「ハインリヒ・・・?ハインリヒ、しっかりしろって!まだ昼過ぎだぞ!?」
 ジェットの慌てたような声が、頭上に降ってくる。
「水持って来てやるから、少し待ってて・・・」
 ハインリヒを椅子に座らせようとするジェットの胸元に、ギュッとしがみつく。
「しばらく、このまま・・・」
 ひどく、イイ気分だ・・・
「酔ってるのか?」
 酔ってる??
 そう、酔ってる。
 いつでも、どんな時でも。
「お前に・・・」
「??」
 ジェットが一瞬、キョトンとした顔をした。
 その顔を見て、ハインリヒの口唇からクスクスと笑いが零れた。
 一度零れ始めた笑いは、止まることがなく・・・。
「フ・・・フフフ・・・アハハハハ!!」
「キミ、笑い上戸だっけ・・・??」
 困惑したようなジェットの声を聞きながら、ハインリヒは愉快な気分で笑い続けた。




〜 続く 〜



ハインさんが壊れました(笑)。
ずっと止めててスミマセン。
色々展開を考えたのですが、これが私の精一杯でした(涙)。
ねこ太様、いっつも私、こんなんでスミマセン!!
しかも、時は止まったままです。
結晶時間並みです(←進めろよ、自分・・・)。
それでは、続きをお願いしま〜す!!






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