<HAPPY!?24デー>

24デーその15:水平線の彼方




「よし、これで終わりだ!」
 ジェットの視線の先で。
 洗い物を終え、シンクを綺麗にした後。
 ハインリヒは、装着していたゴム手袋を外した。
 それからご丁寧に手袋を干し、ジェットを振り向いた。
「ジェット。オレは海に行きたいぞ。これから出かければ、ちょうど夕暮れ時だろう」
「へ?海・・・??」
 テーブルの上に涙の海を作っていたジェットだったが、その言葉に顔を上げる。
「そうだ。夕陽に染まる、海が見たい。お前が行かないのならオレ一人で行くが・・・どうする?」
「行く!キミと一緒なら、どこにだって行くよ」
 ジェットはガバッと立ち上がり、何はなくともハインリヒに賛同の意を示した。



 数分後、二人は再び、ギルモア邸の外に出ていた。
「飛んで行こうか?」
 ジェットが尋ねると、ハインリヒは眉を顰めた。
「無粋だ。ここからそう遠くはないんだし、歩いて行くぞ」
 せっかくの申し出を断られ、
「ハーイハイ、分かりました。キミの仰せのままに」
 スタスタとジェットが歩き出すと、背後から小さな溜め息。
「何を拗ねているんだ、お前は?」
「拗ねてない・・・!」
「・・・とてもそうは思えんがな・・・」
 呆れたような声が聞こえ、キュ、と手を握られた。
「え・・・?」
「焦らずに・・・ゆっくり行こう」
 淡いブルーのキレイな瞳に、笑いの色。

 あ・・・オレなんか今、めちゃくちゃ幸せかも・・・。

 そんなコトを思い、ジェットはハインリヒの手を強く握り返した。
「痛っ!」
「あ、痛かった?ゴメン、ゴメン」
「お前というヤツは、手加減という物を知らんのか!?」
「だからゴメンって!」
「反省の色がない!!」
 繋いでいた手は無情に振り解かれ、ハインリヒはジェットをその場に置いて、足早に歩き出した。
「ハインリヒ〜」
「とっとと付いて来い!」
 振り向いたハインリヒの瞳は、やっぱり笑っていて。
「待てよ、ハインリヒ!」
 ハインリヒの背中を追いかけながら、ジェットも笑った。



 海が、空が、染まる。
 沈んでゆく太陽の光を浴びて、赤く、紅く。
「うわ!めちゃくちゃキレイだな・・・」
「そうだな・・・」
 ハインリヒが、瞳を細めた。
 彼の色素の薄い髪と瞳も、仄紅く色を変える。

 太陽は少しずつ、水平線に姿を隠していく。

 二人黙って、その様子を眺めているうちに。
 ジェットの頭に突然、歌が流れ出した。
 それはつい先日、ジョーが聴いていた歌で。
 メロディーと歌詞がジェットの気に入って、強請って何度も聴かせて貰った。
 その歌が今、この場に、とても相応しく思えて。
 ジェットは口唇を開き、小さく、歌ってみた。
「沈む夕陽に愛を重ねて 昇る朝日に人生を見てた・・・」
 ハインリヒが海から視線を外し、ジェットを訝しげに見つめたが、構わずに歌い続ける。
「・・・かけがえのない愛をくれた 貴方だけは何時の日も何時までも荒野に咲く花のように・・・」

 真っ赤な夕陽を見つめながら、二人の想いを重ねている。今。

「何だ、ジェット。どうした、急に歌なんて歌って?」
 ハインリヒの問いに、ジェットは笑いながら返した。
「ん〜。何となく。今の場面にピッタリの歌かな〜、なんて思ったからさ」

 今も昔も。
 ハインリヒは、ジェットの胸の中に咲く、白く小さな花で。
 いつだって、ジェットの心を和ませてくれるのだ。

「オレに『人を愛すること』を教えてくれたのはキミだって・・・知ってるだろ?」
「また急に、何を言い出すんだ、お前は・・・」
 ハインリヒは戸惑いを隠せないといった風に、俯き、視線を伏せた。
 長い銀の睫毛が・・・ほんのりと紅く、震えた。

 ハインリヒは本当に・・・キレイで可愛い。

 頬に手を沿えて、自分の方に引き寄せた。
 キュ、と閉じられた瞼に一つ、二つとキスを落とす。
 夕陽に照らされて紅い頬が、ますます、濃い紅色を刷いた。



 水平線の向こう・・・。
 太陽はいつの間にか、姿を消しかけていた。



〜 続く 〜



ようやく、夕暮れまで時間が進みました(笑)。
物語の時間と同じぐらい長時間、
わたくしがリレーをとめてしまい、申し訳もなく〜。
劇中歌は、ぐ○いのあ○たいき○ちでございました。
夜の帳が降りてゆく海辺の24を、
この後ねこ太様が素敵にお描きくださるハズ!!
(他力本願でスミマセン)
という訳で、ねこ太さまにタッ〜チvvv
よろしくお願いいたします〜v





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