<HAPPY!?24デー>

24デーその5:浪漫飛行?


 ジェットは大人のキスをハインリヒに迫る。
 ハインリヒの拳がブルブルと震え。
「・・・いい加減にしろっ!」
 怒鳴り声と共に、鼻の頭を思いっきりつねられ、ジェットは涙目になった。
「いってぇ〜!」
「お前が悪い!」
 キッパリハッキリと言い放って、ハインリヒは一人でスタスタと歩き出した。
「待てよ、ハインリヒ!」
 制止の声も聞かず、その背中が少しずつ遠くなっていく。
 ジェットは慌てて、ハインリヒの後を追った。
「ハインリヒ!」
 駆け足でジェットが追いついた時、ハインリヒは足を踏み入れた公園の、花壇の側で立ち止まっていた。
 花壇には背の高い向日葵が、何本も仲良く頭を並べて咲いていた。
「立派なサンフラワーだな」
 ジェットの言葉に振り返ったハインリヒの表情は、穏やかだった。
「そうだな」
 怒りが解けた様子にホッとしながら、ジェットは尋ねる。
「なんか、嬉しそうだな。この花、好きなのか?」
「・・・好きだ」
 形の良い唇から零れ落ちた、その『好きだ』が、自分に向かって発せられたような気がして。
 ジェットは一瞬、ドキリとした。
「どうして好きなんだ?」
 気を取り直して重ねて尋ねると、ハインリヒはクスリと悪戯っぽく笑った。
「教えてやらない」
「えーっ!何だよ、それ!?」
「だから、教えてやらないって言ってるだろうが?」
 そう言って、ハインリヒは向日葵の花を振り仰ぐ。
 太陽のように明るいその花を映した瞳が、スーッと細められ。
 ハインリヒはひどく、優しい表情をした。
 その横顔が。
 ジェットには、真夏の太陽よりも眩しく感じられた。

 とても穏やかなこの一時。
 心ときめく瞬間。
 キミが、側にいてくれるだけで。
 人を愛すること。
 愛される喜び。

「全部、キミが教えてくれたんだ・・・」
「え?」
 背後から、ハインリヒをフワリと抱きしめた。
「こら、ジェット!やめろ、こんなところでっ!!」
 ハインリヒが嫌がる素振りを見せたが、ジェットは構わずに、抱きしめている腕にギュッと力を込めた。
「オレ・・・。やっぱり、キミが好きだよ」
 至極真面目にそう告げると、腕の中でハインリヒがクスリと笑った。
「笑うなよ。オレは、本気で言ってるんだぜ?」
「向日葵が好きな理由を、教えてやる」
 不意にそう言ったハインリヒの指が、ジェットの腕に優しく触れた。
「向日葵をすきなのは、お前に似ているからだ。太陽に向かって進んでいくそのひたむきさ。真っ直ぐで前向きなところ。眩しいぐらいの明るさ。オレにとって、全てが愛しい」
 ハインリヒはそこで、少し考えるようにして言葉を切り。
 少しの間を置いて続けた。
「だからオレは。お前にはいつでも、幸せに笑っていて欲しいと思う」
 ハインリヒのその言葉に、泣きたいような気分になる。
 けれども、ジェットは笑った。
 腕の中の華奢な身体が、ひどく愛しかった。



 ハインリヒを抱きしめたまま、ジェットエンジンに点火する。
 二人の身体が、宙に浮かんだ。
「バカッ!人に見られたらどうするんだ!?」
「大丈夫だって」
 青い空の上で、二人きり。
「ここなら誰も見てないしさ。キスしてイイ?」
「この体勢で、できるものならやってみろ」
「あーっそ。それじゃ、キスしちまうからな〜」
 ヒョイとハインリヒの身体を抱えなおす。
「わーっ!危ないだろうが、バカ!」
「暴れると、もっと危ないぜ?」
 ハインリヒは急に、ジェットの腕の中で大人しくなった。
 そんなハインリヒを横抱きにして、ジェットは笑う。
「それでは、いただきますv」
 氷色の瞳が、キュッと閉じられた。
 チュッvvv
 唇に触れるだけのキスをした後、ジェットはハインリヒの髪を撫でた。
 指の間を、柔らかな銀の髪がサラリと流れた。
「こうしてキミを抱いて、いつの日かウェディングロードを歩いてみたい。って言ったら、どうする?」
 ふう、と、ため息をつく声がジェットの耳に届いた。
「・・・知らん・・・」
 予想していた返事に、
「いつか、ちゃんと返事を聞かせてくれよ?」
 笑いながらそう言うと。
「・・・いつか、な」
 頬をほんのりと赤く染めて、ハインリヒは遠くを見つめた。



 そのまましばらく、二人で空中散歩を楽しんだ。
 季節が季節なので多少暑さが厳しいが、夏らしい真っ白な雲と真っ青な空が気持ちよかった。
 夏の風が、二人を通り過ぎていく。

 不意に。
 ハインリヒがハッとしたように叫んだ。
「ジェット!」
「何?」
「急に思い出したぞ。オレ達、フランソワーズに買い物頼まれていなかったか?」
「・・・・・・」
 フランソワーズとジョーは、ギルモア博士のお供で、泊りがけの外出中だった。
 確か、出掛けに買い物メモを渡され、買い物をしておくように命じられた記憶が・・・あった。
「忘れないうちに、買い物に出るぞ!!」
 ジェットは頷いた。
 フランソワーズが戻ってきた時、買い物をしていなかったが最後、恐ろしい制裁を食らうに違いなかった。
「とりあえず、ギルモア邸だ。買い物メモを取りに行かないとな」
「了解v」
 ジェットはハインリヒを抱いて、ギルモア邸に飛んだ。





〜 続く 〜



向日葵ネタ、使えてよかった〜。あやうく使う前に夏が終わるところでした(笑)。
あと、横抱き空中キッスvを書いてみたかったので、チャレンジ。
書きたいことを欲望のままに書いててスミマセン・・・。
しかし、あんた達、ちゅーしすぎだよ!!朝から既に何回目のキスだ???
いや、させてるのは私なんですけど〜。
一話に一度、ちゅーシーン!!!・・・をお許し下さい・・・。
ねこ太さま、話が一話完結風になってしまい、スミマセン(汗)。
次回はもっと意地悪なタイミング(笑)でお話を切るように頑張ります(←頑張るな)。




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