6 還るべき場所




「ただいま」
 言いながら、ギルモア邸の玄関のドアを開いた。
「おかえり、ジェット!」
「待ってたわ、おかえりなさい」
 暖かな声が迎えてくれる。
 会いたかった人達。
 歓迎の嵐をすり抜けて、一番会いたい人の元に向かおう。
「・・・おかえり。遅かったな、ジェット?」
 リビングへ続く廊下の奥で壁にもたれかかりながら。
 柔らかそうな銀の髪も、透き通ったブルーの瞳も。
 記憶の中の、その人のまま。
「ハインリヒ・・・!!」
 名前を呼んで。
 その人の笑顔に、胸が一杯になる。
 ここが、我が家。
 自分の還るべき場所。



「あれ、誰もいないのか?」
 ギルモア邸に滞在して数日。
 いつもより遅めに起床したジェットはリビングで一人、コーヒーを飲んでいるハインリヒに尋ねた。
「皆、出掛けているぞ」
「チェッ。オレも誘ってくれればイイのに・・・」
 クスリ。
 ハインリヒが笑った。
「ピュンマが起こしに行ったんだがな。お前があまりにも幸せそうな顔で寝てたんで、起こせなかったんだとさ」

 穏やかな微笑。
 ジェットが好きな表情。

 今は二人きりであるという事実に、不意に思い至った。
「ハインリヒ♪」
「何だ?」
 ハインリヒの隣に座り、ギュッと抱きしめた。
「ジェット・・・?」
 肩先に顔を埋めて、思いっきり息を吸い込んだ。
 優しい、ハインリヒの香り。
 心が、ホッと和んだ。
「仕方ないヤツだな・・・」
 ポンポンと、ハインリヒの手がジェットの頭を撫でた。
 その手の感触が、愛しくて。

 心から、思う。

「オレ、キミがいないと生きていけない・・・」
 ハインリヒの肩先に額をあてたまま、ジェットは呟いた。
「何を馬鹿なコトを・・・」
 呆れたようなハインリヒの声が降ってきたが。
 しかし、その声音はひどく柔らかで。

 心が満たされていく。
 キミが、側にいてくれるだけで。

 キミを愛して。
 キミに愛されて。
 その想いが、オレが生きているという証で。
 オレの、勇気だ。

「ハインリヒ。キミが、好きだ」
 顔を上げ、ごくごく真面目に、ジェットはそう告げた。
 一言一言を、確かめるように。
 ハインリヒの頬が、仄かに朱に染まる。
「馬鹿なことを言っていないで、さっさと飯を食え」
「・・・分かったよ」
 名残惜しいけれども。
 立ち上がりながら、掠め取るように、口唇にキスを。
「ジェット!?」
「愛してるぜ?」
「・・・馬鹿・・・」
 苦笑するハインリヒに投げキッス。
 そして、キッチンへと向かった。
「ジェット、オレも・・・」
 背中を追いかけてきた声の、末尾は殆ど声になっていなかったけれども。
 ジェットの頬には、ひどく嬉しそうな笑みが浮かんだ。

 どうしてこんなに、心の中に。
 キミが溢れて、止まらなくなって。
 時折、どうしていいのか分からないほどに。
 キミだけが・・・。




キミを愛して、キミに愛されて。
その想いが『生きている』という気持ちに変わる。
キミの側で、オレは生きる。
離れていたって、心はずっとキミの側にいるから。

だって・・・。

「オレの還る場所は、キミの隣だけだから」

明るい陽光の差し込む昼下がりのキッチンに。
その言葉は柔らかく溶けて・・・。



〜 END 〜





よしっ(握り拳)!!
このお話は、キッチリ甘くなりました!!!
ビバ、24〜!!!
やっぱり24はベタ甘ラブイチャが基本と言うことで(笑)。
普段ハインがジェットに癒される話ばかり書いているので、
たまにはハインに癒されるジェット、
というのもいかがでしょうか??





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