4 芽吹き




 金の髪が、フワリと白い頬を彩る。
 しかし、その表情は・・・。
「アンジェリーク!!」
 名前を呼ぶと、彼女はランディを振り向いた。
「ランディ様」
 つい先ほどまでの泣きそうな表情が嘘のように、微笑みながら。
 その笑顔が、ランディの心にほんの少しだけの影を落とした。
「アンジェリーク、大陸の様子を見てきたのかい?」
 気持ちを引き立てるようにしてランディが尋ねると、アンジェリークは、今度は困ったように微笑んだ。
「はい。そうなんです・・・」
 その笑顔に、やはり違和感を覚える。
「アンジェリーク」
「はい・・・?」
 どこか上の空で、アンジェリークが答えた。
「何かさ、俺に話せることってないか?」
「え?」
「俺じゃ頼りないかもしれないけどさ。君の力になれたら、って・・・そう思う」
「・・・ありがとうございます・・・!」
 三度、アンジェリークは笑った。
 あ・・・。
 ランディは、急に嬉しくなった。
 この笑顔・・・。



 初めて見た時、その金の髪の眩しさに驚いた。
 けれども不安そうな顔をしている、頼りなさげな女王候補。
「俺はランディ。よろしく」
 自己紹介すると、少女ははにかみながらも微笑んだ。
「アンジェリークです。よろしくお願いします」
 その笑顔に、ふと、心が暖かくなるような気がした。

 頼りないながらも、頑張り屋の女王候補。
 彼女なりに、何にでも一生懸命に取り組んでいて。
 その姿勢に好感を持った。

「アンジェリーク」
 名前を呼ぶと、優しく笑う。
「ランディ様」
 自分の名前を呼んでくれる時の、声のトーンが好きだったり。
 だから・・・。



「俺じゃ頼りないかもしれないけどさ。君の力になれたら、って・・・そう思う」
 そう言われ、アンジェリークは素直に嬉しいと思った。
「・・・ありがとうございます・・・!」
 その返事に、ランディは笑った。
 この笑顔・・・。
 アンジェリークは、ランディの笑い顔が好きだった。
 明るい笑顔を見ていると、元気付けられる。
「実は・・・育成について、少し悩んでいるんです」
 ロザリアの大陸が目覚ましい発展を遂げているのとは裏腹に、アンジェリークの大陸は伸び悩んでいた。
「そうか・・・」
 ランディの手が肩に触れ、アンジェリークは一瞬、ドキリとしたが。
 そのまま、ランディは励ますようにアンジェリークの肩を叩いただけだった。
「大丈夫!君は頑張ってるし、今にきっと、イイ結果がでるさ。君さえ良かったら、俺も一緒に考えるよ」
「はい!よろしくお願いします!!」
 正直、落ち込んでいた。
 けれども・・・。



 慣れない生活に戸惑う自分に、気さくに声をかけてくれた。
「俺はランディ。よろしく」
 勇気を司る、風の守護聖。
 その笑顔にどこかホッとしながら、自分の名前を名乗った。
「アンジェリークです。よろしくお願いします」

 辛い時にはきっと、励ましてくれる。
 元気で、それでいて優しい、風の守護聖。
 その存在に、力づけられてきた。

「アンジェリーク」
 ニコニコと笑いながら、名前を呼んでくれる。
「ランディ様」
 呼び返すと、ますます嬉しそうに笑う。
 その笑顔が・・・。



「ランディ様、私、頑張ります!!」
「その調子だよ!王立研究所の資料、俺の執務室で見せてもらってもいいかな?」
「はい!」
 すっかり元気を取り戻したアンジェリークの姿に、ランディは安堵する。
 この少女の悲しい顔や困った顔は、出来れば見たくなかった。
「じゃあ、行こうか?」

 差し伸べられた手に、アンジェリークは一瞬、躊躇った。
 しかし。
「はい!」
 キュッとランディの手を握りしめた。
 その手の温かさが、嬉しくて仕方ない。

 お互いに少し照れくさくて。
 でも嬉しくて。
 そのまま二人は、ランディの執務室に向かった。
 明るい太陽の光に照らされ、二つの影を仲良く並べながら。




〜 END 〜





サブタイトルは「恋の芽吹き」でございましょうか。
大人っぽい雰囲気の話が3題続いたので、ランリモは初々しく!!
を目指して書きました。
もっと可愛く書ければ良かったのですが・・・(汗)。





HOME   企画部屋