3 うたかた

何時もどおりのお願いですが。
黒44は、通常裏部屋での取り扱いなので、
当サイトの表のSSとはかなり雰囲気が違います。
そんな黒44が好き!!
という方のみ、スクロールして読んでやってください。
苦手な方は回れ右でお願いいたします。
ちなみに今回も、2は全く絡んでません。





































『2・3日で戻る』
 そう言って。
 この城の主人が出掛けてから、もう幾日が過ぎただろう。
 ベッドに横たわったまま、ハインリヒは指折り数えた。
 もう、10日以上。
 手の指の本数が足りないぐらいだ。
 ベッドに残っていた彼の人の香りも、もう、消えてなくなってしまった。
 急に、激しい不安がハインリヒを襲った。
 ・・・捨てられた?・・・
 彼がもう、戻らなかったら・・・?
 そう思うと、恐怖で身体がガタガタと震えた。
『アルベルト・・・』
 もう、名前も呼んで貰えないのか?
 キスしてもらうことも。
 我を忘れてしまうほどに、激しく抱かれることも。
 ・・・もう、ないのか・・・?
『2・3日で戻る』
 そう言われた。
 だからハインリヒは、待つしかなかった。
 ただ、ずっと。
 けれども、待っている時間がひどく辛くて。
 冷たいシーツに顔を押し当て、ハインリヒは嗚咽の声を押し殺した。



「アルベルト」
 ハインリヒの大好きな声が、名前を呼んでくれる。
「私がいなくて、さぞかし寂しかったろう?」
 抱きしめられ、口付けられる。
 会いたかった人。
 聞きたかった声。
 紅の瞳が、ハインリヒの瞳を覗き込んだ。
「・・・アルベルト」
 その人の腕の中に抱かれ、乱れる。
 広い背中をギュッと抱きしめ、名前を呼んだ。
「      !!」



 自分の声で、ハッと目が覚めた。
 隣にいるはずの人がいないという現実に、息が詰まりそうになる。
 どうせならずっと、眠ったまま。
 彼の人の夢を見たままでいたかったのに。
「・・・バカヤロウ・・・」
 瞳から零れ落ちそうになった涙を、手の平で拭った。

 カタリ。
 小さな物音に、ハッと振り向くと。
 褐色の肌を血痕で汚したハインリヒの主人である男が、部屋の入り口に立っていた。
 深い紅の瞳が、真っ直ぐにハインリヒを見詰め。
 彼は、口を開いた。
「アルベルト」
 胸に喜びが溢れてきて、ハインリヒは声を出すことも出来ない。
「思ったより手間取ってな・・・」
 面白くもなさそうに言った後、男はハインリヒに呼びかけた。
「アルベルト」
 手を差し伸べられて。
 しかし、ハインリヒはその手を取ることを躊躇った。
 また、夢だったら・・・?
「アルベルト」
 再度、名前を呼ばれた。
「留守が長すぎて、主人の顔を忘れたか?」
 その低い声に引きずられるように。
 恐る恐る、ゆっくりと。
 ハインリヒはその人に近寄り、褐色の手を取った。

「アルベルト・・・」
 誰かの血で汚れた指先が、ハインリヒの頬のラインをなぞる。
「抱かせろ」
「望みのままに・・・」
 彼の人の目の前で、もはや何の躊躇もなく。
 ハインリヒは身に着けていた衣装を、バサバサと床に落とした。

 抱かれたい腕。
 キスされたい口唇。
 愛されたい。
 ・・・彼に、愛されたい。
 彼だけに。
 ずっとずっと、飼われていたい。

 頬に艶めいた笑みを浮かべ。
「アルベルト」
 呼ばれるがままに、その人の腕の中にその身を投げ出した。
「オレを、愛して・・・」
 身体だけの関係だと思われていてもいいから。
 うたかたのように、消えてしまわないで。
 抱きしめられ、その肩に頬を寄せると。
 微かに鼻先を掠めるのは、血の香り。
 その香りが、今目の前にいる人が幻ではないと教えてくれているような気がして。
 ハインリヒはそっと瞳を閉じて、その香りを胸いっぱいに吸い込んだ。




〜 END 〜






今回のお題の黒44は2題とも、2が不在でしたが。
皆さんは、黒44と黒44+2のどちらがお好きなのでしょうか??
ちょっと伺ってみたい気がします。
そこはかとなくえっちな雰囲気を目指してみました。
いつもどおり玉砕ですが。





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