素晴らしい日
**4が黒4課長を大好き!な設定の色物リーマン44です。苦手な方はリターンで**





 その日は、何とも平和な一日だった。
 自社ビルの窓の外に広がる空は真っ青で。
 ブラインドの隙間から、キラキラと陽が差し込んでいる。
 常日頃、嵐のように迫ってくるユーザ部門からの照会の電話もない。

「平和とは、何て素晴らしいんだ・・・!」

 誰にも邪魔されることなく自分の仕事をしながら、ハインリヒはしみじみと呟いた。
「本当にね。のんびりと仕事ができて嬉しいわ〜」
 マイカップでお茶を啜りながら、フランソワーズもニコニコだ。
「何かもう、このまま帰っちまいたいよな〜。天気もイイし」
 頬杖をつきながら、ジェットが窓の外に視線を走らせた。

 年に数回あるかないかの、本当に、平和な日だ・・・。

 これで課長がいらっしゃれば最高なのに。
 と、ハインリヒはコッソリと心の中で思った。
 麗しの上司は、現在、外勤中であった。
 よし!この資料を仕上げて、課長がお戻りになったらラブラブマンツーマン!を目指して頑張ろう・・・!!
 などとグッと拳を握り締めながら嫌な決意を固め、心意気も新たにパソコンに向かうハインリヒ。
 そんなハインリヒを隣のフランソワーズが生暖かい瞳で見つめているが、全く気づいていない。



 15時を過ぎた頃、ようやく上司が戻ってきた。
 戻ってきた上司はサッと部下達に視線を走らせ、軽く首を傾げた。
「今日は・・・何事もなく?」
 首を傾げる課長も素敵だ〜っv
 などとハインリヒが思っているうちに。
「ええ、課長。今日はとっても平和な日なんですのv照会の電話がほとんどなくて」
「今のところ、トラブルも起きてません」
 フランソワーズとジェットに答えを返されてしまい、ハインリヒは少なからず落胆した。
 課長とお話しする機会を、ひとつ失ってしまった・・・!!
 可哀想な位に、課長ラブ★な男である。
「そうか。いつもならば電話応対に追われているお前達が、誰一人受話器を握っていなかったのでな。何の波風もないのならば、結構なことだ」
 軽くネクタイを直し、上司が自席に着く。
 ネクタイを直す仕草でさえ、とてつもなく優美だvvv
 と、ハインリヒは一人でうっとりだ。
「ハインリヒは本当に可愛いわね〜」
 などと、年下のフランソワーズに言われてしまう体たらくではあるが・・・。

 やっぱり、平和な一日。

 上司に資料を提示し、簡単に説明を。
 それに対する的確な助言を貰い、ハインリヒは優秀な上司の素晴らしさにクラクラしていた。
「アルベルト」
 あああ〜v課長がオレの名前を呼んでいるv名前を・・・、って、トリップしてる場合じゃないっ!!
「はい!何でしょう、課長?」
 慌てて直立不動の姿勢を取ると、上司がクスリと笑った。
「先日、お前が私に薦めてくれた茶だが・・・」
 あわあわと動揺しながら、ハインリヒは固まった。
 美味しくなかった、などと言われてしまったら、どうすればいいのだ!?
 そんな不吉な考えが頭の中を通り過ぎていく。



 あれは、忘れもしない数日前。
 世間はバレンタインデーという悪魔の日だった。
「課長〜vいつもお世話になってますv」
 フランソワーズを筆頭にして、
「シュヴァルツ課長vチョコ貰ってくださ〜いvvv」
「いつも色々とありがとうございますvvv」
 などと、女性社員が山ほど上司の下に押しかけてきた。
 美麗で優秀、かつ独身。
 そんな上司は、当然ながら女性職員にモテモテである。
 くそっ!オレが女なら、課長にはマル○リーニのチョコだぞ!!プラス高級茶のおまけ付きだっ!課長はお茶好きなんだからな、キミ達はそれを知らないだろう?
 などと思いながら、ハインリヒは心の中で歯軋りしていたのだが(そんなハインリヒの机の上も、チョコの山だった)。
 ハインリヒは女性職員に激しく対抗すべく、その日の帰り際にさりげな〜く、愛しの上司にお茶を手渡したのであった。
「美味しいお茶を見つけたので・・・。課長、お茶お好きでしたよね?」
「茶は趣味の一環だ。ありがたくいただこう」
 超絶に美麗な笑顔と共に、上司はハインリヒの茶を受け取ってくれた。



 そんな回想はさておき、ハインリヒはガチガチに緊張しながら上司の言葉を待った。
「アレは、実に美味かったぞ」
「はっ・・・はい!ありがとうございますっ!」
 自分で精製したわけでもないのに、何がありがとうございますなのかは良く分からないが、ハインリヒはぺこりと頭を下げた。
「あれは、烏龍茶の一種なのか?」
「台湾緑茶です」
「ほう・・・。そうなのか。今まで、緑茶系にはあまり興味がなくてな。だが、お前からの茶は美味かったぞ」
「オレも初めて飲んだ時に感動したので、課長もお気に召すかな、と思いまして・・・」
「香りの爽やかさがイイな。味わいもまろみがあって、更に深みもある。ひとつ勉強になったぞ。礼を言う」
「あ、はい・・・!」
「では、資料の手直しを。終わったら一度、部長と副部長に説明を。私も立ち会おう」
「分かりました、よろしくお願いします」
 今一度、上司にペコリと頭を下げて。
 自席に戻ろうとしたハインリヒの耳に、上機嫌な上司の声が届いた。
「アルベルト。今度、お前の茶の店を紹介して欲しいのだが・・・?」
「・・・喜んで」
 ふわふわしながら席に着いたハインリヒを、フランソワーズが小突いた。
「あらっvハインリヒったら、良かったわね〜v課長からデートに誘っていただいてvvv」
「そそっ、そんなんじゃないっ!」
 ワタワタと赤くなるハインリヒを見て、フランソワーズがケタケタと笑う。
「ほんと、ハインリヒって可愛いわぁvvv」
「フランソワーズ・・・。頼むから、オレで遊ぶなよ・・・」
 ブツブツ言いながら、ハインリヒは資料の修正を開始した。

 今日は、本当に平和な・・・素晴らしい日だ。




  〜 END 〜




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付き合い始める大分前の二人です。
ハインさんが一方的に課長に憧れている感じで(笑)。
とは言いつつ、もちろんハインさんは、黒4課長のお気に入りですvvv
44祭の初っ端が、パラレルでごめんなさいでした〜。






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