あまり読後感が良くないと思いますので、苦手な方はご注意下さい。









 意のままに蹂躙しながらも・・・胸の片隅で、微かに痛みを感じている自分がいる。
「アルベルト・・・」
 名前を呼ぶと、頬に張り付けるようにして、薄っすらと笑んだ。
 この男の想いは、此処にはない。
 白い頬に張り付いた笑顔は、偽物だ。

 プライドも何もかも打ち捨てて、気持ちを請うているのは自分の方だ。
 傍から見れば、とてもそんな風には見えないだろうが。
 手に入れたはずなのに、手に入らない。
 そのもどかしさに、気が狂いそうになる。
 ・・・狂っているのは、元からか・・・。

 偽りの微笑みも、優しさも要らない。
 私は・・・お前が欲しい・・・。

 馬鹿の一つ覚えのように、口付けを繰り返す。
 合わさった口唇から、想いが伝わればいい。
 そんな、柄にもない事を考えながら。

 お前の気持ちが、欲しい。

「・・・おい・・・」
 口唇が離れたタイミングで発せられた掠れた声に、機械的に反応した。
「何だ?」
 自分を見つめる、潤んだ瞳も偽りの色を湛えて揺れる。
 薄い口元から零れ落ちる、小さなため息。
 すらりとした指先が頬に触れたと思うと、笑みの形を作って曲がった口唇が近づいてきた。
 思わず、口付けから逃れてしまう。

 何故?
 偽りの口付けなど、欲していないからだ。

 己の目の前の表情が、歪む。

 ・・・・・・何故?
 分からない。

 苛立ちを隠すようにして、折れそうなほどに強く、抱きしめると。
 背中に回された腕に、更に心が波立った。

 抱きしめれば抱き返される、口付ければ口付けが戻ってくる。
 ・・・要らない・・・。
 偽りの行為も思いも・・・要らない。


 この世の最後が訪れる時。
 その時に、互いにきつく抱き合っていたとしても。
 この男はきっと、自分に心を許さないままに違いない。

「アルベルト」
 愛しい名前を口唇の端に乗せ。
 どこか自嘲的に笑いながら、口唇を重ねる。

 お前の心が手に入るのならば。
 己の誇りでさえも、何もかも捨ててやろう。
 そんな日は決して訪れることはあるまいが。

 愛のない微笑み、愛のない優しさ。
 全てが残酷で・・・胸を抉った。



  〜 END 〜




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ちゅう44です(真っ先に44アップするってどうなのよ、自分・・・)。
4の想いが自分に向いているのに、それに気付かずにグルグルする黒、
をテーマにお送りしました(汗)。
意表を突いた歌選択を!!
と思いながら、オーソドックスな選択をしてしまいました・・・。
これの歌イメージでタジハナとか板木をやると面白かったと思うのですが。
というか、あんまりちゅーっぽくならなくて申し訳もなく・・・!!








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