突然に、降り出した雨。
「木村さん、こっち!雨宿りしましょう」
 板垣に手を引かれ、軒並みシャッターの締まった商店街の、手近な店の軒下に滑り込んだ。
「いやぁ。すごい雨ですねえ」
 板垣が、上空を見上げる。
 バシャバシャと、まるでバケツから水を流しているような勢いだ。
 おまけに、雷まで鳴りだした。

 空がゴロゴロと唸り、時折ピカリと鋭く光る。

 隣の板垣は、いつになく静かな様子だ。
 珍しい事もあると、何気なくその様子を観察していると。
 空が光りゴロゴロと音がする度に、ビクリと肩が揺れている。
 ニヤリと、木村は笑った。
「おやおや〜?板垣君??」
「何ですか?」
 答える表情も、少し強張っているような気がする。
「君はもしかして、雷が怖いのかな〜??」
 可愛いところもあると思いながら、からかうようにして聞いてみる。
 グッと言葉に詰まった後、可哀想なくらいに赤くなりながら、ボソボソと答えが戻ってきた。
「・・・キライです・・・」
 ピカリと、空が眩しく光る。
「うわぁ〜!!」
 慌てる姿が面白い。
 ケタケタと笑うと、ムッとした顔をして木村に視線を向けた。
「雷怖くて悪いですかっ!?木村さんだって、何か怖いものってあるでしょっ!!!!」
「別に悪くないけどさぁ。お前が慌ててるとこって、結構可愛いぞ〜vvv」
 笑いながら言ってやると、ムキになって言い募った。
「雷が頭の上に落ちてきたら、死んじゃうんですからねっ!!怖いでしょ!」
「あー。ハイハイ」
 またもや、空が光る。一際大きく、ゴロゴロの音。
「うわっ!」
 頭を抱えてビクビクしている。
「お前、マジで雷怖いのな」
「だから、怖いって言ってるじゃないですかあぁぁ」
 その様子が可愛くて、木村がクスクスと笑っていると。
「・・・木村さん?」
「ん〜?何だ?」
 板垣の視線が、据わっている。
「そんなに笑ってる暇があったら、可愛い僕が怖がらないようにしてあげようとか、優しい事を思ったりしないんですか??」
「思わないな!」
「ひどい、ひどい、ひどいです〜!!!」
 据わった目付きのまま、ズズイと板垣が迫ってくる。
「ちゅーしてください!!」
「は?」
「雷が怖い、可哀想で可愛い僕のために、ちゅーしてください」
 一体、何がどうなれば、ちゅーすることになるのだ??
 木村の頭の中は、ハテナマークでいっぱいになった。
 ピカピカゴロゴロと空が煩いが、どこか逝ってしまっている板垣にとって、それは最早、恐るるに足らぬことらしい。
「ちゅーですよ、ちゅー!!!!」
 ワケの分からない事を喚きながら、板垣が迫る、迫る。
 ギャーと叫ぶ間もなく、うちゅうとキスされた。
 それはもう、濃厚なヤツを。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「う・・・・うわうわうわ〜!!!!」
 ようやく解放され、木村は先ほどの板垣並にワケの分からない雄叫びをあげた。
「ん〜vとってもスウィートvvv」
 お馬鹿な言葉を吐く板垣に、脱力してしまいたくなる。
「木村さ〜んvもう一回〜〜vvv」
「イヤ・・・」
 嫌だと言い切る前に、再び、うちゅうとされた。
 今度は、軽いキスだったけれど。
「木村さ〜んvvv」
「寄るな、触るなっ!!」
「えへへへへ〜v」
「気持ち悪いっ!!」
「木村さんと、ちゅーしちゃったvvv」
 別に、今までだって何回かしてるよなぁ・・・。
 そう思ったが、突っ込むのも疲れるので、何も言わない事にした。
 仲良くじゃれあって、気付けば、空のピカゴロはいつの間にか収まっていた。
「木村さんがちゅーしてくれれば、僕、雷も怖くなくなるんですけどね〜v」
「・・・ありえねえ・・・」
 ピシリと、板垣の額を指先で弾いて。
「公共の場でのチューは禁止!!」
 キッパリハッキリと言い捨て、木村は板垣を放置してスタスタと歩き出した。
「木村さん、置いていかないでくださ〜い!」
 慌てる板垣を振り返り。
「置いてかれたくなかったら、さっさと付いて来い」
 木村は、ニカリと笑った。


  〜 END 〜




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板木はギャグっぽくなってしまいました(汗)。
ちゅーまで辿り着かないかも・・・と途中で冷や汗モノでしたが、
なんとかちゅーさせられましたvvv
板木って、何か好きなんですよね〜、ホント。
可愛くていいよなぁvvv








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