星夜に祈る




 女王候補寮の窓から、静かに空を見上げる。
 漆黒の空に、無数の星々が穏やかに瞬いていた。
 闇と同じ色の髪を持つ一人の守護聖の姿を思い浮かべて、小さく息を吐いた。

 周りに無関心な人物だと思っていた。
 けれども時折、驚くほどに優しい瞳で見つめられていることがある。
 アメジストの瞳を見つめ返すと、その瞳からはスッと、表情が消えてしまうけれど。
 何かを乞うような瞳で、見つめらることもある。
 この時も、視線が合うとすぐに逸らされてしまう。
 その横顔が、淋しげに感じられるのは、気のせいだろうか?

「不思議な方・・・」

 そう、思う。
 周りを拒絶するようでいて、けれども瞳の奥にはもっと深い感情が隠れているような。

 あの方は、あの瞳の奥で何を願っているのだろうか・・・?

 それは、自分には到底分からないことだった。



「あ・・・星が・・・」

 視線の先で、星が流れていく。
 小さな光が尾を引いて、一筋、ニ筋・・・。

 空を振り仰ぎ、少女は願った。

「星よ・・・。あの方の願いを叶えて・・・!!」

 心から笑えないことは、不幸だと思う。
 あのアメジストの瞳に、微笑が戻れば・・・。
 自分も、どれほど嬉しいだろうか・・・。

「星よ・・・!」

 祈るように両の手の平を合わせる少女の目の先で、星は光を放ちながら落ちてゆく。
 落ちてゆく・・・。



 そして静寂が戻った夜空に、少女は再び祈りを捧げた。

 あの方の願いが、どうか叶いますように・・・。

 閉じられる窓。
 軽い音を立てて閉まる、ピンクのカーテン。
 室内は、薄い闇に包まれる。

 優しい夜の気配の中で、少女は静かに、眠りについた。



  〜 END 〜




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リモちゃん視点で、クラ様を想う。
優しいリモちゃんには
自分の願いよりもクラ様を優先させてもらいたくて、
こんな話にしてみました。





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