日を待ちながら
空が、白み始める。
深い闇の時間は終わりを告げ、間もなく世界は光に包まれる。
微かに赤味がかった空に、今にも消え入りそうな月。
・・・そう刻を置くことも無く、完全に姿を消してしまうだろう。
クラヴィスは寝室のカーテンを閉めた。
月を見上げながら様々な物に想いを馳せる時間は、終わりを告げている。
出仕の時間まで、暫しの睡眠を取らねばならぬ。
仄かに明るい夜明けの気配を漂わせる部屋の中。
スルリとベッドに滑り込み、クラヴィスは瞳を閉じた。
目を覚ました時には。
重たいカーテンの隙間からは、否応無く光が差し込んでいるだろう。
月を待つのと同じように、その明るい日差しをも自分は待っているのだろうか・・・?
そんな事を考えながら、まどろみの中、眠りの世界へと漂う。
夜のしじまの中にいると、落ち着く。
だから、執務室も暗くしている。
ぼんやりと光る水晶球が、まるで月のように。
自分にとって、ひどく落ち着く雰囲気の執務室であるはずなのに。
何故か最近、ソワソワと落ち着かないのは・・・・。
私は、日の光を待っている・・・?
黒いカーテンを開けば、太陽の光を執務室に入れることは容易い。
けれども、自分が待っているのは、もっと別の光・・・。
コツコツコツ。
執務室のドアが、軽やかなノックの音を響かせる。
「失礼します!」
明るい声と共に。
光が、差し込む。
パッと、執務室が明るくなるような錯覚。
「クラヴィス様、おはようございます。育成をお願いします!」
眩しい金の髪から、太陽の光が零れ落ちてゆく。
その光が、柔らかく執務室に満ちていくのが分る。
待っていたのは、彼女がもたらしてくれる光・・・?
「お前の望み、確かに・・・」
言葉少なに答えながら、クラヴィスは少女を見つめた。
まるで。
光に祝福されたような少女。
クラヴィスにとってあまりにも眩しい、けれどもどこか求めずにはいられない存在。
「はい。よろしくお願いします」
屈託無く、少女は笑う。
その笑みからも・・・眩しく、光が零れた。
日の光を、待っていた。
閉ざされた心の扉を開く、光を。
・・・この少女を・・・?
少女が退出した後も、光の余韻が残る。
クラヴィスは立ち上がり、少女の後を追うようにして執務室のドアを開いた。
遠ざかろうとしていく後姿に、クラヴィスは躊躇いがちに声をかけた。
「アンジェリーク・・・」
少女は振り向き、問いかけてくる。
「何か御用ですか、クラヴィス様??」
「お前さえ良ければ、次の日の曜日に・・・」
小さく頷いて、白い頬がほんのりと紅色に染まった。
そして。
優しく、優しく少女は微笑んだ。
心の中に、少し、日が射したような。
そんな、想いを。
私は・・・待っていたのだろうか・・・?
〜 END 〜
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
これにてお題完了!!
最後はキッチリとクラリモっぽくして〆させていただきましたvvv
お題タイトルと内容が合ってないような気もしないでもないのですが・・・。
お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!!
そして、最後になりましたが、クラ様、お誕生日おめでとうございましたvvv
ブラウザを閉じてお戻りください。