肩にかかる全ての重圧






「お前は、光の守護聖となるべくしてこの世に生を受けたのだ。そのことに、誇りを持って生きよ」
「光の守護聖は首座の守護聖。全ての守護聖を統べるべき存在。忘れてはなりません」
 物心付いた時から、ジュリアスにはそんな言葉ばかりが与えられた。
 この世に生を受けた瞬間、次代の光の守護聖になる運命を与えられたのだ。

 弱冠五歳で光の守護聖となったジュリアスは、己の胸に誇りを抱いて職務を果たしてきた。
 首座、という言葉は重い。
 途轍もなく。
 その重さを常に感じながら・・・。
 顔を上げ、胸を張って生きていく。
 弱音を吐くことは許されないのだ。
 そう、自分に言い聞かせながら。

 カツカツ、カツカツと音を立てながら、聖殿の廊下を歩く。
「あら・・・!」
 小鳥のさえずりのような声が聞こえてきた。
「ジュリアス!」
 目映い金の髪をふわふわと揺らしながら、ジュリアスの女王が現れた。
「これは、陛下・・・。お一人ですか?」
「そうよ。これから執務室に行くの」
 ジュリアスの目の前で、女王が立ち止まった。
 恭しく跪き、頭を垂れる。
「女王陛下にはご機嫌麗しく・・・」
「たった今、不機嫌になりました」
 言葉を遮られ、ジュリアスはハッと顔を上げた。
「んもう!久し振りにお会いしたのに、ジュリアス様ったら、すっごく他人行儀!」
 まるで女王候補時代に戻ったかのような口調。
 若草色の瞳が、不機嫌の色を纏って揺れている。
「しかし、陛下・・・!」
 反論しようとした瞬間、ふわり、とジュリアスの頭に優しく女王の手が触れた。
「肩に力が入りすぎです!女王になりたての私が頼りなくて、ジュリアス様にもご迷惑をおかけしていることは良く分かっています。でもそれを、一人で抱え込む必要はないんですよ?」
 ぽんぽんと、頭を撫でるような仕草。
「何かあれば、私やロザリア、守護聖の皆さんに、ちゃんと話してくださいね」
 優しい手のひらを、温かだな、と思った。
「分かりました陛下。そのように・・・いたします」
 答えれば、女王の表情が和んだ。
「はいvよろしくお願いします」
 サラサラと衣擦れの音がして、女王の気配が遠ざかっていく。
 顔を上げ、立ち上がって。
 華奢な後姿が廊下を曲がって消えていくのを見送った。
 女王交代の忙しなさの中で、確かに肩に力が入っていたかも知れない。
 何事も失敗してはならぬと細心の注意を払って行動してきて。
 あまり、周りが見えていなかったのは確かだ。
「今この場で、陛下にお会いできて良かった・・・」
 候補時代から、不思議な少女だった。
 周りの者の心を自然に和ませるような。

 スーッと、肩が軽くなったような気がした。

 口元にフッと笑みを浮かべて。
 ジュリアスは再び、歩き出した。



  〜 END 〜




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誕生日には関係ありませんが(汗)。
ジュリ様と女王リモちゃんv






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