輝く海




 二人で、電車に揺られている。

 天気予報は晴れだが、空はまだ、沢山の雲に覆われている。
 けれども、とても暖かな日だ。

 ハインリヒを半ば強引に連れ出して、ねずみの国へ。
「一度、行ってみたかったんだよな〜」
 そう言って笑うと、ハインリヒは呆れたように肩を竦めた。
「お前は時々、子供のようだな・・・」
「でもさ、楽しそうだと思わないか?」
 言葉を返したが、それに対する返事はなく。
 ハインリヒは窓の外に視線を向けた。

 通勤時の下りの電車は、上りのそれよりも、断然に空いている。
 しかし、人が全くいないわけではなく。
 スーツ姿のサラリーマンは、出勤の途中だろうか。
 仲が良さそうな女の子の二人連れや、小さい子供を連れた家族連れ。
 こちらの面々はきっと、自分たちと目的地が同じに違いない。
 同じ車両にいる人々を見回してクスリと笑った後、ジェットもまた、窓の外の景色を眺めた。

 徐々に、目に映る景色に自然が多くなってきた。
 そして・・・。
「あ、海だぜ、ハインリヒ!」
 眼前に広がる、殆ど波の無い海。
 秋深い季節のそれは、色味に灰がかったような。
 けれども穏やかに揺れていた。
「電車から海が見えると、何だか嬉しくならないか?」
 ハインリヒも微かに笑って、首肯した。
「・・・確かに、そうかも知れんな」

 不意に。

 雲の隙間から射した太陽の光が、広い海のある一点だけを、眩しく輝かせた。
「うわ・・・!」
 キラキラと輝く波間に、驚きの声しか出せない。
 あまりの眩しさに、ジェットは瞳を細めた。
 こんな風に、海が表情を変える様など。
 今まで、見たことが無かった。

「・・・眩しいな。けれども、綺麗だ・・・」
 呟いたハインリヒのクリスタルの瞳が、海からの光を反射して煌めいた。
 その様に、ジェットは再び、息を飲んだ。

 ・・・キミも、とてもキレイだ・・・。

 そんな台詞を公共の場で吐くことも叶わず、ジェットは黙って、言葉を胸に飲み込んだ。

 キレイな海、キレイなキミ。

「何だかさ、今日一日、幸先イイような気がしない?」
「そうだな・・・」

 穏やかに笑い合う二人を乗せ、電車はガタゴトと揺れながら。
 進んだ。



〜 END 〜




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ねずみの国に行く途中の電車で、
海が本当にそんな風に輝きました。
あまりの眩しさにビックリしました。
これは是非、24で眺めて欲しいと思って、CPは24です。





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