ブルーバイ○ーレストラン
今まで真っ青な空の下にいたことが嘘のように。
頭上には一面の星空が広がっている。
「こんばんわ」
外はまだ昼だというのに、上品な水色の制服を着たウェイトレスはニッコリと微笑みながら夜の挨拶をした。
落ち着かないような気持ちで、手元のメニューを開いたハインリヒの目が丸くなる。
「おい、シュヴァルツ・・・」
「何だ?」
声のトーンを落とし、ハインリヒは同行者に囁きかけるようにして言った。
「昼食というには、少し値段が高いんじゃないか?」
「フン」
面白くもなさそうに、シュヴァルツは鼻の先で笑った。
「このパークで私に最も相応しい場所に来たのだから、当然だ。お前が気にする必要は無い」
パチリと指を鳴らし、シュヴァルツはウェイトレスを呼び止めた。
「コースを二人分。食後に珈琲を」
「コースをお二人分、食後のお飲み物は珈琲ですね?」
注文を繰り返すウェイトレスに向かって、シュヴァルツは鷹揚に頷いた。
ハインリヒはゆっくりと辺りを見回した。
店内は、堤燈の灯かりで仄かに明るい程度だ。
もう少し遠くに目をやると、カ○ブの海賊の船が出港していく姿が目に映った。
「落ち着かないな・・・」
ボソリと呟くと、椅子の背もたれに腕をかけ、ゆったりと寛いでいる様子のシュヴァルツがニヤリと笑った。
「アルベルト。ここのウェイトレスの制服は、パーク内で1・2を争う制服らしいぞ?少しは落ち着いて、美しい女性の姿でも見ていたらどうだ?」
「・・・お前でも、そんなコトを考える事があるんだな・・・」
肩を竦めながら答えると、
「勿論、彼女達がお前の美しさに敵うべくも無いがな」
澄ました顔で、サラリと恥ずかしい台詞。
「・・・・・・」
絶句するハインリヒに、シュヴァルツはニヤニヤと笑う。
「照れているのか?ん?」
「・・・・誰がっ」
間もなく料理も運ばれ、器用にナイフとフォークを操りながら、シュヴァルツがハインリヒに語りかける。
「このレストランはブ○ーバイユーレストランというのだが、ブルーバ○ユーとは『青い入江』という意味らしい」
「そいつは知らなかったが・・・キレイな名前じゃないか」
「そう言うと思ってな。だから、お前を連れてきた」
紅の瞳が、薄暗がりの中でひどく魅惑的に光る。
微かに赤くなった頬を見られないようにと、ハインリヒは慌てて俯き、食事の続きに専念しようとした。
クスクスと小さく笑い声が聞こえ、シュヴァルツが笑っているのが分かり、バツの悪い思いをする。
「・・・笑うなよ・・・」
「これは失礼・・・」
言いながらも、小さな笑い声は途切れない。
「おい、シュヴァルツ!いい加減に・・・!」
「少しは落ち着いたらどうだ、アルベルト?」
余裕綽々の態度が・・・気に入らないと思う。
「・・・・・・」
「そんなに拗ねるな」
「!!」
ムスッとした表情で食事を続けていると。
「アルベルト。空を見てみろ」
その言葉に、思わず上を向くと。
スーッと綺麗に弧を描きながら、上空を星が流れていった。
「運が良い。流れ星は、なかなか見ることが出来ないらしいからな」
クスリ。
今度は、ハインリヒが笑った。
「・・・何だ?」
「前もって、わざわざ調べてくれたのか?」
「・・・知らん・・・」
クスクスと笑いながら。
ハインリヒは食後の珈琲に手を伸ばした。
「・・・ありがとう」
「フン・・・」
そっぽを向いてしまったその人に視線を当てたまま。
ハインリヒは再度、クスリと笑った。
〜 END 〜
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黒44なのですが、何気にベタ甘に・・・!!
鬼畜な黒様がお好きな方には申し訳も無く・・・。
だって、パーク内では無体なこと出来ないですよね!?
人の目があるし・・・(笑)。
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