ミステリーな旅





 ハインリヒは何故か、某王国の『シン○レラ城ミステ○ーツアー』の待ちの列に並んでいた。
 隣では、シュヴァルツがニヤニヤと不気味に笑っている。
「・・・シュヴァルツ・・・?」
「何だ、アルベルト?」
「お前はまた、何か企んでいるんじゃないだろうな・・・?」
 シュヴァルツはフンと鼻を鳴らした。
「企むとは人聞きの悪い。私は常に、お前を楽しませてやっているだけではないか?」
「・・・分かった。そういうコトにしておいてやる」
 しかし、シュヴァルツの薄笑いが止むことはなく。
 ハインリヒどこか不安な思いを抱えたまま、城に足を踏み入れた。

 キャストの男性は、元気一杯である。
「本日ご案内させていただく、島村です。よろしくお願いしま〜す!」
(じょっ、ジョー!?)
 ハインリヒは驚き。。
 横にいるはずのシュヴァルツに視線を走らせた・・・が。
 更なる驚きがハインリヒを待ち受けていた。
 シュヴァルツの姿が、忽然と消えていたのだ。
「一体、何処に・・・??」
 ハインリヒの困惑を他所に、城の入り口の扉は閉じられた。
 どうやら、この城はねずみーの悪役達に乗っ取られたらしい。
 室内に置いてあった鏡が怪しく光り、
「クククククク・・・」
 聞き覚えのある笑い声と共に、その鏡の中にシュヴァルツの顔が浮かび上がった。
「諸君、ようこそ我が居城へ。この城は、この私が乗っ取った。脱出したければ、するがいい。無事に済むとは思えんがな・・・」
「何だと、こいつぅ〜!!」
 ジョーは大袈裟に、鏡に向かってそう言った。
 そしてニコリと笑いながら、ゲストを振り返る。
「今日のこの回は、特別仕様になってますから、いつもとちょっと違いますからね〜vでも大丈夫!ボクが皆さんを無事にお助けしますよ!!」

 ツアーは、続く。

 暗い道を歩かされ。
 所々でシュヴァルツの笑い声を聞き、ハインリヒは頭を抱えたくなった。
(アイツは一体、何を考えているんだ・・・!?絶対に、ロクでもないコトに違いない・・・!)
 ジョーの説明によると、この城には『光の剣』が隠されており、その剣で魔王(というかシュヴァルツ?)を倒すことが出来るようだ。
 連れられるがままに、ハインリヒは歩いた。
 そして・・・。
「あの部屋の奥に、光の剣が・・・!誰か魔王を倒してくれる勇者様になってくれませんか・・・?」
 ジョーの目が、ギラリとハインリヒを見据えた。
「さあ、さあ・・・!!」
 周りの面々は何処か冷めているらしく、誰も手を挙げようとしない。
「は・・・はい・・・」
「はーいvじゃあ、そこのキレイな銀の髪のお兄さんが勇者に決定!!お名前は?」
「ハインリヒ・・・・です」
 渋々と名乗ると。
「・・・ククク・・・」
 低い、笑い声。
「勇者など連れてきても無駄な事・・・!私の恐ろしさを思い知らせてやるぞ」
 常日頃からそうなのだが、今日のシュヴァルツは何時もより更に、芝居がかっていた。
「それじゃあ、魔王が待つ次の部屋に行きましょうね〜。大丈夫ですよ、ボク達には勇者様がついていますから!!」
 ニコニコと笑いながら、ジョーが扉を開くと・・・。
 紫紺のフードを身に纏ったシュヴァルツが、大きな椅子にゆったりと腰をかけていた。
 シュヴァルツの前には、魔法の釜。
「よく来たな、人間どもよ・・・」
 ハインリヒに視線を当て、シュバルツはニヤ・・・と口唇の端を曲げて笑う。
 キッと睨みつけてやると、喉を鳴らして愉快そうに笑った。
「甦れ、私の兵隊よ・・・!!」
 釜からもわもわと白い煙が舞い上がり。
 ハインリヒ達の足元で、骸骨兵が瞳を光らせ、その身をもたげた。
「勇者様、光の剣を・・・!!」
 ジョーに声をかけられ、ハインリヒはハッと我に返った。
 キラキラと輝く巨大な剣をジョーと一緒に手にして、魔王に向ける。
 弾け飛ぶ閃光。
 これにて魔王は成敗され、一件落着!!
 だと思ったが、それは甘い考えだった。
 マントで光を撥ね返し、シュヴァルツは笑う。
「ククク・・・・光の剣など、この私には効かんぞ」
 ゆっくりとその身を起こし、シュヴァルツの紅い瞳がキラリと不敵な光を放つ。
「世界が滅びるというなら、滅びるがいい・・・!私は全く構わんぞ・・・?」
「うわーん!怖いよ〜!!」
 小さな子供が、泣き出した。
 それを意に介する風もなく、シュヴァルツは、長いマントを翻し。
 あっという間に、ハインリヒの隣に降り立った。
「世界を護りたいというのなら・・・。私への贄として、この男を貰おうか・・・?クク・・・」
「あ、勇者様〜!!」
 ワザとらしいジョーの叫び声。
 どうにでもなれという気持ちでその場に立っていると、シュヴァルツの腕がハインリヒの身体を抱き上げた。
「今日の所は見逃してやろう。美しい獲物を手に入れたことだしな・・・」
 バサリと。
 再びマントが大きく翻る。
 そしてハインリヒとシュヴァルツの姿は、その部屋から消えた。




「シュヴァルツ!」
「ん?何だ・・・?」
「さっきのは一体、何だったんだ!!」
「お前を楽しませてやろうと思ってな。・・・楽しくなかったか?」
「楽しいより恥ずかしかったぞ!!」
「私は楽しかったが・・・な」
 ニヤニヤと笑うシュヴァルツに、ハインリヒはガックリと肩を落とした。
「もういい。お前には、何も言わん」
「お前は世界のために捧げられた、私への贄だぞ?従順なのはイイことだ」
「誰が贄だ、誰がっ!!」
「・・・あまりカッカとしていると、早死にするぞ?」
 クスリと笑ったシュヴァルツの褐色の指先が、ハインリヒの銀の髪をサラリと梳いた。
 そして、彼は軽く身を屈め。
 一瞬だけ、重なる口唇。
「〜っ!!シュヴァルツ!」
「口付けたくなるような顔をしていたお前が悪い」
「・・・・・・・・・次のアトラクションへ行くぞ・・・」
「姫君のお望みのままに」
「オレは姫になった覚えはない・・・!」
 愉快そうに笑うシュヴァルツの背中に向かって。
 ハインリヒは思いっきりあかんべーをしてみせた。
「・・・アルベルト、何か?」
「別に、何でもないぞ」



  〜 END 〜




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


ミステリーな旅で、魔王黒様!!のネタで一つ。
ちょっとギャグテイストになりましたが。
もっとこう、悪の帝王っぽい黒様にしたかったよ・・・。
ガクッ・・・(力尽きました)。
一さんから黒様魔王のイラストを頂戴しました。
カラー版は
こちらからご覧下さいvvv





ブラウザを閉じてお戻りください。