王国貸切!!





 黒いベンツが、某王国の駐車場に滑り込むようにして停車した。
 なんとも不思議なことに、他には車が一台も見当たらない。
 運転席から褐色の肌をした一人の男が降り立ち、助手席のドアを開いた。
「着いたぞ、アルベルト」
「ああ、ありがとう・・・」
 助手席から降りてきたもう一人の男の肌は、抜けるような白さだ。
 王国のだだっ広い駐車場で並んで立っているこの二人は、顔立ちが非常に良く似ていた。
 しかし、身に纏う雰囲気が全く違うため、キチンと別人だということが分かる。
「しかし、シュヴァルツ。どうして他に車がないんだ?ここは、激混みだと聞いていたんだが・・・」
「さあな」
 シュヴァルツと呼ばれた褐色の肌の男が、ニヤリと意味ありげに笑った。
「急がんと開園の時間になるぞ。さっさと私に付いて来い」
 スタスタと歩き出す男の後を、白い肌の男が慌てて追いかけた。



 『本日(○月○日)、当園は貸切のため、休園とさせていただきます』
 王国の入り口で、ハインリヒは呆然と立ち尽くした。
「しゅっ、シュヴァルツ!!」
「何だ・・・?」
「今日は貸切だそうだぞ!?せっかくやって来たというのに・・・何て運が悪いんだ、オレ達は!?」
 クスリと。
 シュヴァルツが失笑のようなものを漏らした。
「笑い事じゃないぞ!!」
 ハインリヒがそう叫んだ時。
「シュヴァルツ様、ようこそ当王国へ。本日は貸切いただきまして、ありがとうございます」
「無理を言ってしまって、申し訳ないな」
「いえいえ、シュヴァルツ様のご依頼とあれば・・・」
 紅の瞳が、面白そうにハインリヒを見つめた。
「アルベルト。何をボーっとしている。来た事がないと、楽しみにしていたろう?」
「え・・・。だって・・・」
「お前のために貸し切ったのだ。存分に楽しめ」
 まだ呆然としたままのハインリヒの肩を、シュヴァルツが軽く抱き、彼は王国内へと足を進めた。
 いつもは人でごった返している(らしい)エントランスにも、ハインリヒとシュヴァルツ以外のゲストはいない。
「こんな贅沢・・・許されるのだろうか・・・?」
 ボソリと呟くと、シュヴァルツがフンと鼻先で笑った。
「私はお前が望むなら、宇宙だとて手に入れてやるぞ?」
「お前はまたっ!そんなコトを・・・!!」
「私は当然の事を言っているまでだが?」
 いつもは小憎たらしいその傲慢な態度。
 けれども・・・。
「シュヴァルツ」
「何だ?」
「ありがとう・・・」
 シュヴァルツはニヤリと笑い、胸元にスッと、その手を持っていった。
 そして優雅に、西洋の貴族風のお辞儀をした。
「姫君、御手をどうぞ?」
「またお前は・・・」
 ぼやくハインリヒの言葉を遮るようにして。
「お前にとって最高の一日にしてやるぞ?」
 薄い口唇から紡がれた言葉に、ハインリヒは微笑んで。
 差し出された手に、自分の手の平をそっと乗せた。



  〜 END 〜




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短いですが、黒様の王国貸切ネタ!!
黒様は万能の神なので、金も権力も思いのままよ。
フハハハハ!!!
という、管理人の欲望を現しているお話でございますな(笑)。
これにてねずみの国の更新は完了v
リアルタイムでお付き合いくださった皆様、
どうもありがとうございました〜!!




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