暑い夏の日
「暑い、暑いよ花井〜!!」
季節は夏。
溶けそうなほどに暑い日が続いている。
チーム一の元気者である田島まで、バテ気味だ。
しかし、高校球児たる者、暑かろうが何だろうが、練習を怠ることはない。
球児の夏は、そんなモノだ。
練習が終わると、皆、半ば朦朧としながら三々五々に帰宅していく。
日誌を付ける花井は、自然、チームメイト達を送り出すことになる。
「花井、お疲れ〜」
「おう、お疲れ!気を付けて帰れよ」
「また明日な」
そんな中、田島はダラダラと部室に居残り、暑い暑いと騒ぎながら花井にまとわりついているのだった。
「なあ、花井ったら〜!暑い、暑い、暑い〜!!!」
花井は、ハアと溜め息をついた。
「田島・・・」
「なに〜???」
「暑かったらベタベタすんな。余計に暑いだろ?」
言いながら、グイグイと田島を押しのける。
「花井、冷たいっ!!冷たいよ、花井!!オレは悲しいよ、ゲンミツにっ!」
「・・・分かったから、少し大人しくしてろよ・・・」
心の底からお願いモードでそう言うと。
田島はプーッと頬を膨らませ、それでも仕方ないといった風にいささか乱暴に椅子に腰掛けた。
そして背もたれに肘を付きながら、花井が部誌を書く様をじーーーっと見つめている。
「よし、完成!」
花井がパタリと部誌を閉じると、田島が嬉しそうに笑う。
「終わったの、花井?じゃあ、一緒に帰ろうぜ〜!」
言いながらバッグを手にした田島は、思い出したように叫んだ。
「花井!!」
「??何だ・・・?」
「お利巧に待ってたオレに、ご褒美はないの?」
ニカッと、田島は笑う。
それは・・・『何か』を期待した笑い。
「なあなあ、ご褒美、ご褒美!!」
タダでさえ暑いというのに、更に暑苦しい田島のラブアタックに、花井は眩暈がしそうになった。
「田島・・・」
「ん?何なに〜??」
自分も大概甘いと思いながら。
期待に満ち溢れる黒い瞳に視線を合わせて。
チュ。
と、頬にキスしてやった。
「え〜、それだけ??」
思いっきり不満そうな田島に向かって、素っ気無く言い放つ。
「そう。それだけ」
そして、田島の背中を押して、部室から出た。
「今日は本当に暑いよな。田島、帰りにアイス食ってこう」
不満気な顔が、一瞬にして満面の笑顔に切り替わった。
「ホント?それって、デート??ラブラブ下校デート???」
本当にバカなヤツだと思いながら、それでもバカな子ほど可愛いとかいう言葉どおりに、嬉しそうな田島が愛しい自分に苦笑してしまう。
「お前がそう思うなら、デートなんじゃねえ?」
答えると、やっぱり嬉しそうに笑った。
校門を出て、二人でノンビリと歩く。
日は既に落ちてしまい、これで少しは涼しくなると良いのだが、湿度が高くてムシムシする。
まさにHot and Humidだと、花井は英語の時間に教師が言っていた言葉をぼんやりと思い出していた。
「あっつー。もうダメだ〜」
花井の隣で自転車を引きながら、田島は隣でブツブツとボヤいている。
下校途中にあるコンビニで、花井は立ち止まった。
「田島、ちょっと待ってろよ」
パタパタと店に入り、カキ氷のバーを2本、購入した。
「お待たせ。ホラ、食えよ」
アイスの袋を田島に渡すと、ピリピリと袋を破って口にくわえた。
「ひゃー。ひゅめひゃい(冷たい)」
「少しは落ち着いたか?」
アイスを齧りながら、尋ねて。
「夏大、もう直ぐだな・・・」
などと急に、脈絡のない事を言ってみる。
「オレ達は勝つよ。どこが相手であろうと、ゲンミツに!」
頼もしく言い放つ田島を見ていると、安心する。
「うし!明日も頑張るぞ〜!!」
少しでも長く、オレ達の夏が続きますように・・・。
沈みきってしまった夕陽の代わりに、星に、願いを。
二人は顔を見合わせて笑い、家路に着くために、別の道を歩き始めた。
〜 END 〜
−−−−−−−−−−−−−−−−−
夏大前のとある日を、
既にお付き合いを開始している設定のタジハナで。
花井くんからほっぺにちゅーv
本当は馴れ初めなども書いてみたいのですが、
もう少し自分の頭の中で構想を練ってからという事で。
ブラウザを閉じてお戻りください。