HONEY





 皆が帰ってしまった後の部室。
 座って部誌を書いている姿を、正面の席からじっと眺めた。
 カリカリと、シャープペンシルの芯が紙の上を走る。
 綴られていく文字は、キッチリとしていてキレイだ。
 そして。

 花井自身もキレイだよな〜vvv

 などと思い。
 田島は頬杖を付いて花井を眺めながら、ウヒヒと笑った。
 ペンを走らせる手を止めて。
 怪訝そうに、花井が顔を上げた。
「・・・田島?」
 問うようにして名前を呼ばれ、
「花井が、とってもキレイだな〜vって思って」
 そう言うと、カーッと赤くなって俯いた。
「バカなことばっかり言ってると、本当にバカになるぞ!」
「え〜。だって、ホントのコトじゃん。花井、キレイ。花井、カワイイvvv」
 田島の言葉は、無情にも冷たく流された。
 再び、カリカリとペンが走り出す。
 けれども、その顔は赤いままで。

 照れてる、照れてるv

「ホント、花井ってカワイイ」
 ガタリと音を立てて座っていた椅子から立ち上がり、花井の背後に回った。
「は〜な〜い〜vvv」
 名前を呼んで、後ろからギュッと抱きしめた。
「ホント、食べちまいたい」
「田島。部誌が書けないだろ?いい加減に・・・」
 振り向いた花井の唇に、ちゅ〜〜〜と、キスをした。

 その唇は、とてもとても甘く。

「花井!もっとちゅーさせて!!」
 うちゅーと迫ると、コツンと頭叩かれた。
「部誌書き終わるまで、大人しくしてくれ。頼むから・・・」



 渋々と、元の席に戻った。
 また、正面から花井を眺める。
 俯き加減の顔。
 花井が瞬きをする度に微かに震える、意外に長い睫毛。
 スッと通った鼻筋。
 引き締まった口元。

 やっぱ、キレイでカワイイなぁ。



 紙の上を走っていたペン先が、動きを止めた。
 パタリと、部誌が閉じられる。
「終わった?ねえ、花井、終わった??」
「・・・お前の所為で、大分時間が掛かったけどな・・・」
 部誌を所定の場所にしまい、花井は筆記用具をカバンに仕舞い込んだ。
「田島」
「ん?何??」
「待っててくれて、ありがとな」
 花井が、ニコリと微笑む。
 その笑顔に、クラクラと眩暈がした。

 カワイイ、キレイ、カワイイ・・・・。

 同じ言葉が、芸も無く頭の中をグルグルと駆け巡って。
 そして。
 花井は、なんてキレイで可愛らしく笑うんだろうと思う。
 見ているこちらを幸せにしてくれるような、優しくて甘い笑顔。

 好きだ、好きだ、好きだと。
 何度言っても、言い足りないぐらい。

「花井が好きだ〜!!」
 大きな声で叫ぶと、花井がワタワタと慌てた。
「バカっ!そんな大声で叫ぶなよ!!」
 田島はニッと笑いながら、花井を見つめた。
「ね、花井。ちゅーしよ、ちゅーvvv」
 笑いながら、じりじりと壁際に花井を追い詰めた。
「・・・まったく・・・」
 観念したように、花井が瞳を閉じた。
 長い睫毛が田島を誘うようにして揺れる。
 そして、目元に落ちた影を、田島は至近距離で見ることができた。
「花井・・・」
 呼びながら背伸びをして。
 唇を、重ねた。

 その唇は・・・。やっぱり、とても甘い・・・甘い・・・。

「・・・花井が好きだよ・・・」

 唇を離して熱っぽく囁くと。
 赤い顔をした花井が、田島の背中にギュッと手を回した。
 そんな仕草が可愛くて。
 クスリと笑った後、田島はもう一度、ちゅーと花井にキスをした。


 真っ白な砂糖よりも、もっとずっと甘い。
 お前は、オレだけのHONEY。


〜 END 〜

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500のキリ番申請をしてくださった、時和響鳴様に捧げるタジハナです。
「あまあまのタジハナ」とのご指定でしたが、
ご満足いただけるような出来になりましたでしょうか(ドキドキ)?
タジハナは始めたばかりで照れがあり、
この程度の甘さになってしまいました。
時和さま、ご申請本当にありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。





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