『お題06:残業』
(44)

*1/22に実施した、44なりチャのログをノベライズしたのもです*
(ハインリヒ:Chihaya_K_Amou様、黒4:ふみふみ)






 カツカツと。
 次第に、足音が近付いてくる。
 書類からふと顔を上げると。
「 ただいま戻りました!」
 誰にともなく挨拶をしながら、部下のアルベルト・ハインリヒが部に戻ってきた。
「ああ、アルベルトか・・・。今、帰社したのか?」
 呟くような小声は、ハインリヒには届かなかったらしい。
「随分遅くなってしまったな……」
 彼は自席のパソコンに電源を入れ、カタカタと子気味良い音を立てながら、キーボードで何かを打ち込んでいる。
 恐らく、今日の日報だろう。
 カサリと音を立てながら書類を机の上に置くと、ようやく、その瞳がシュヴァルツを向いた。
「あ、はい。遅くなりましたが、先程戻ったところです」
「毎日毎日、ご苦労なことだ。今日もさぞかし疲れたろうな?」
 言いながら、意味深に笑って見せると。
「いえ、疲れたというほどでは……」
 何もないような表情を装いながら、ハインリヒが答える。
 鼻先でせせら笑い、シュヴァルツは尋ねた。
「フン。まあいい。で?今日の成果は?」
 ハインリヒは、あからさまにホッとしたような表情を見せた。
 その態度が少し、気に食わない。
「A社との件は、次回プレゼンテーションの日程が決まりました。役員が揃う日をピックアップして後日連絡ということになっています。B社ですが……」
 あくまで事務的に、手帳に記した覚え書きを見ながら報告をするハインリヒの言葉を、途中で遮った。
「大分可愛がってもらったように見受けられるが・・・。A社か、B社か?」
 首筋に、紅い痕が見える。
 頬に薄く笑みを浮かべながら、シュヴァルツは褐色の指先をスッと、ハインリヒの首筋に伸ばした。
「……っ!」
 ハインリヒは僅かに首を竦め、必死で平静を繕ういながら報告を続けようとする。
「今回から、B社の担当者が変わりました。前任者は香港支社へ転任とのことで……」
「B社の担当者は、お前に執心の様子だったがな・・・。さては、お前絡みで飛ばされたか?クク・・・。A社へのプレゼンテーション案は早めに決定し、私に報告するように」
「2、3日で企画書をまとめます。……日報は入力しましたので、今日はそろそろ……」
 パソコンの電源を落とすのにかこつけて、ハインリヒはシュヴァルツからから目を逸らそうとしたがシュヴァルツはそれを許さなかった。
「つれない事だな、アルベルト。遅くまで部下の帰りを待っていた上司に、何か一言ないのか?ん??」
 氷色の瞳が、恐々といった風に、シュヴァルツの上に戻った。
「………帰社が遅くなりましてすいませんでした。もう遅いですから課長もそろそろ……」
「面白くも無い一言だな」
 シュヴァルツは再度、ハインリヒの首筋に指を伸ばし。
 とある一部分に触れた。
 そして、口唇の片方を歪めるようにして笑い。
「・・・アルベルト」
 その名を、呼んだ。
「課長っ……! やめてください、誰か来たら……」
「今の時間に帰社する営業など、お前以外に誰がいる?」
 最後まで言わせずに、ハインリヒのネクタイを引き寄せ、口唇を重ねた。
 微かにハインリヒの身体が身じろいだが。
 シュヴァルツがネクタイを掴んでいるせいか、大きく抗うことができない。
 口唇を奪われたハインリヒは、きゅ、と目を瞑り、ネクタイを押さえるシュヴァルツの手を解こうとした。
 そんなハインリヒの小さな抵抗などはどこ吹く風で、シュヴァルツは角度を変えながら深いキスを続けるた。
「……んっ、ふ……!」
 白い喉の奥からくぐもった声が洩れ。
 ハインリヒの膝から力が抜け、がくん、と腰が落ちた。
 その反応に薄く笑みを浮かべながら、シュヴァルツはハインリヒ口唇を離した。
 そしてそのまま、ハインリヒから離れ、自席に腰を落ち着けた。
「やめろと言いながら・・・イイ反応だな。クク・・・」
 ハインリヒは机に縋るようにしながら、床にへたり込む。
「……か、ちょ……っ」
「首筋に、紅く痕が残っているぞ?他の場所にも付けられているのではないか?服を脱げ、アルベルト。この私が検分してやろう」
「あ……」
 美しい瞳が、泣き出しそうに揺らいだ。
「……そ……んな……できなっ……でき、ませんっ……!」
 冷ややかにハインリヒを見下ろしながら、シュヴァルツは言い放つ。
「出来ない・・・?お前は一体、誰に向かって口を聞いているのだ?我が社では、上司命令は絶対だということを忘れたか。もう一度言う。服を脱げ」
 く、と唇を噛みながら、ハインリヒは机に縋りながら立ち上がった。
 上着の袖を抜き、すとん、と肩から床に落とす。
「クククク・・・。やれば出来るではないか?」
 喉を鳴らして笑いながら。
 シュヴァルツは服を脱ぐハインリヒの姿を、舐めるような視線で凝視した。
 しゅるん、と衣擦れの音をさせながらハインリヒはネクタイを抜き、これもまた、床へと落とした。
 そしてワイシャツのボタンに手をかけたが、そこから先に進めむことができずに。
 その様を、シュヴァルツは面白そうに眺めた。
 笑いを含んだ声で、ハインリヒに問いかける。
「続けろ。もし自分で脱げないと言うのなら・・・。そうだな、特別に、この私が直々に脱がせてやっても良いが・・・それを望むか?」
「いえ……結構です」
 消え入りそうな声でハインリヒは返答し、止まっていた手を必死で進めた。
 震える白い指先がワイシャツのボタンを一つ、二つ、三つと外したタイミングで、
「アルベルト。もう少し、こちらへ」
 手招きをすると、怯えたように顔を上げて、シュヴァルツを見た。
「……あ……は、はい……」
「私の手の届く所まで・・・だぞ。分かっているな?」
「は……い、只今……」
 何かを振り切るような表情で足を進めるハインリヒを瞳を細めながら見つめ。
「素直なことだな・・・」
 低く、呟くと。
「……逆らうことは許されないのでしょう……?」
 自嘲めいた言葉が、端整な口唇から漏れた。
 その言葉に、鼻先で笑うことで答える。
「フン・・・。その通りだ。私に逆らうことは許さん」
 ハインリヒを眺めながら、第三ボタンまで開かれたワイシャツにスルリと指を滑り込ませた。
 ハインリヒの身体が、微かに震える。
 胸元を撫でるように微妙に指を動かしながら、
「アルベルト。続きはどうした?」
 そう問うと、ハインリヒはスラックスからワイシャツの裾を抜き、残ったボタンを全て外して、何かに挑むような目でシュヴァルツに視線を当てた。
「そのような顔をしても・・・・」
 開いたシャツから見え隠れする肌に視線を走らせ、
「・・・ココと・・・おや、ココにも・・・」
 白い肌に散らばっている紅い痕を、指先で辿る。
 シュヴァルツの指が触れるたびにハインリヒはかすかに肩を震わせ、そして、言葉を発した。
「検分は、お済みですか?」
「は?何をとぼけた事を言っている?まだ続きがあるだろうが?」
 スラックスに視線を走らせながら、続きを要求する。
「……この先も、というなら……貴方が御自分でなさればいい……嫌いでは、ないのでしょう……?」
 挑むようなその言葉に、シュヴァルツは口唇の端を曲げて笑った。
「この私にそのような口を聞くとは・・・。後悔させるぞ、アルベルト?」
「貴方の下についてから、後悔することすら諦めました……だけど、唯々諾々と貴方の言うなりにはなりたくない」
 何を生意気を・・・。
 そう思い、シュヴァルツは微かに眉根を寄せたが。
 その後、思いなおしたかのように意地の悪い表情で笑んだ。
「良いだろう。この先は私が・・・。もう一度問うが、自身の言葉に後悔はないな?」
 スラックスのベルトに指を伸ばすと、ハインリヒは薄く笑んだ。
「……後悔していたら、今頃ここにはいません……」
「フン・・・その心意気は褒めてやるぞ」
 口唇を重ね。
 そのままカチャカチャと音を立て、ベルトを外す。
 ハインリヒはだらりと腕を下げたまま、シュヴァルツの口付けを受けた。
 シュヴァルツは舌を絡めハインリヒの口内を犯しながら、器用にスラックスの前を開けて下着の中に手を入れた。
 ハインリヒの頬がパッと朱を刷き。
 その口唇から、押し殺したような声が洩れた。
「……っく……」
「フ・・・」
 ハインリヒの口唇から漏れる声を聞きながら、シュヴァルツが長い指をハインリヒに絡めると。
 びくん。
 大きく、肩が揺れた。
 白い手が上がり、シュヴァルツのベルトの辺りを掴んだ。
「……っ……!」
 がくっ、と膝がくずおれそうになる。
 口唇を離し、シュヴァルツは薄く笑った。
「アルベルト・・・大分良さそうだが・・・?先ほどまでの威勢はどうした・・・ん?ククク・・・」
 褐色の指先は絶えず、ハインリヒを嬲り続けている。
「良く、なんか……っ!」
 気丈にも、きっ、と瞳に力を込め、ハインリヒがシュヴァルツを見返す。
「お前のココは、イイと言っているが・・・?」
 シュヴァルツが更に指先を動かすと、くちゅ・・・という音が誰もいないオフィスに響いた。
「……っ、や……、あぁっ……!」
「ククク・・・。嫌だと言いながら・・・良い反応だな。お前のコレが音を出しているのだぞ?」
 腕の下で羞恥に震える身体に更なる快楽を生み出そうと、シュヴァルツは巧みに、指先を動かした。
 くだらない矜持など、快楽の前では風前の灯火のようなものだ。
「……嫌だ、と……言っても、貴方は……これを、止めたりは……」
「嫌だ、という言葉は上辺だけだろう?その証拠に・・・悦んでいるのはお前だ・・・。違うか、アルベルト・・・」
 耳元にフッと息を吹きかけると、
「悦んで、なんか……あ、ぁっ!」
 ハインリヒの膝ががくんと落ちた。
 崩れ落ちそうになるところを、腕を掴んで引き上げて、シュヴァルツは更に行為を続けた。
「そろそろか・・・?強情を張らず、もっとイイで啼いたらどうだ?本当は、立っているのも辛いのだろう?クク・・・」
 低く笑うと、シュヴァルツはハインリヒを引きずるようにして、応接セットのソファに向かい、華奢な身体をソファの上に放り投げた。
 キシリと、ソファのスプリングが軋む。
 ハインリヒはソファの上で手足をばたつかせ逃れようとするが、シュヴァルツはいとも容易く、その身体を押さえ込んだ。
「抵抗しても無駄だぞ?もう、身体に力が入るまい・・・」
 口唇の端を曲げて笑った後。
 シュヴァルツの口元から赤い舌がチロリと覗き、先走りの液が滴るそれに絡んだ。
「やっ、あ……!」
 ハインリヒの口唇から、殺しきれなかった嬌声が零れた。
「かちょっ……やめっ!」
 シュヴァルツは、ピチャピチャと音を立てながら、舐め上げていく。
「イクか・・・?ククククク・・・」
「く……あ、ぁっ……!」
 苦しげに頭を振りながら、ハインリヒが喘いだ。
「か、ちょっ……も……ぁぁっ……!」
 白い液体が弧を描き、ハインリヒのシャツと腹を濡らした。
 褐色の指先にその液体を絡め、シュヴァルツはハインリヒに見せ付けるようにしてペロリと舐めた。
「ククク・・・。ヨかったろう?」
 一瞬強ばった後、ハインリヒの身体からぐったりと力が抜けた。
 シュヴァルツに自分の放った欲情を見せつけられて、堪らないといった様子で目を逸らす。
「もっとヨくしてやるぞ、アルベルト。しかし、お前だけが楽しむというのは不公平というものだ。私も一緒に楽しませてもらうとするか・・・」
 目を逸らしたままのハインリヒから、恨めしげな言葉が漏れる。
「……貴方は……いつも、そうだ……!」
「・・・何が言いたい?」
 反抗的な態度に、いささか口調がキツくなってしまう。
「したいように……すればいい……どうせそうしなければ、貴方の気は済まないのでしょうから……」
 ハインリヒの顔から、表情が消え。
 そして、淡々と呟くようにこぼした。
 それとは対照的に。
 シュヴァルツはニヤリと笑った。
「別に私は、これで止めても構わんのだぞ?だが・・・お前が収まらないのではないか?」
 ハインリヒの腹を濡らしている液体を指先で再度拭い、後ろに塗りこめるようにして。
 そのまま、中を軽く掻き回した。
「ぃっ、ふ……うんっ……」
 苦痛と快楽が入り混じったような表情と声。
 まなじりに、涙が浮かんだ。
「そういうふうに……したのは、貴方がただ……!
「ふう・・・」
 シュヴァルツは、小さな溜め息をついた。
「最初から、お前は素質充分だったのだがな・・・それを他人の所為にするか・・・。まあいい。このまま、悦ばせてやるぞ」
 指の本数を二本、三本と増やす。
 ぐちゅぐちゅという音が、辺りに響いた。
「・・・吸い付いてくるな・・・クク・・・」
「んっ……んんっ……!」
 次から次へと与えられる感覚に酔わされているのだろうか。
 ハインリヒは切なげにシュヴァルツを呼んだ。
「あ……ぁ、も……っ、か、ちょっ……!」
 意地の悪い笑みを浮かべながらハインリヒを見下ろし、
「アルベルト、どうして欲しい?」
 そう、問うと。
 吐息の下から切れ切れに声が漏れた。
「……せ、てっ……!」
 喉を鳴らして、シュヴァルツは笑った。
「クククク・・・。模範解答だな、アルベルト。褒美をくれてやるぞ。お前の、望みどおりに」
 ハインリヒの口唇を湿らせるように、ペロリと舐め上げた。
 スラックスの前を寛げ、自身をハインリヒのそこに押し当てる。
「あ、あ……ぁっ……」
 熱い塊がそこを押し広げ入っていくと。
 感じ入ったような声が、開いた口唇から零れ落ちる。
「あ、つ……、あ……!」
 その瞳から。
 ぼろぼろっと一気に、涙が零れた。
 熱い内部に全てを埋め込み、シュヴァルツはゆっくりと動き出した。
「アルベルト、気分はどうだ・・・ん?良さそうだがな・・・。クク・・・泣くほどイイか・・・?」
「 ……っ、ひ、ぁんっ……やっ……んんっ……」
 縋り付くものを求めているのだろうか。
 指先が、虚空を彷徨った。
「も……か、ちょ……」
「もう・・・何だと言うのだ・・・?」
 感じる部分など、全て知り尽くしている。
 ポイントを執拗に突きながら、けれどもどこか焦らすように動き、シュヴァルツは笑いを含んだ声で尋ねた。
 シュヴァルツの二の腕に辿り着いた白い手が、スーツの生地を握りしめた。
 激しく揺さぶられ、ハインリヒはもう、喘ぎ懇願するしか出来ないようだった。
「……っあ、はぁっ……、……か、せてっ……助け、てっ……!」
「フ・・・」
 そんなハインリヒの様子に、低く笑い。
 更に激しく突き上げながら問う。
「イイか・・・?」
「んっ、んんっ……!」
 声を上げながら、ハインリヒはコクコクと首を縦に振った。
 乱れる銀髪をサラリと撫で。
「ならば・・・イかせてやるぞ」
 涙と情慾に濡れた瞳が、シュヴァルツを見つめた。
 間髪入れずに揺さぶると、一際高い声で啼いた。
「あ、ふ、ああっ……か、ちょ……!」
「アルベルト・・・。イクがいい」
 シュヴァルツは満足そうに笑み。
 掻き回すようにして2・3度、ハインリヒの腰を抱えて強く揺さぶった。
「……ひ、あっ……!」
 掠れた声の嬌声が上がると同時に、ハインリヒは自身の熱を吐き出した。
 くたり、と力を失った体が深くソファに沈む。
 ハインリヒが熱を放った瞬間、
「・・・っ!」
 キュッと締め付けられ、シュヴァルツもまた、ハインリヒの中に欲望の証を散らした。
 そして、フ、と軽く息を吐き、名前を呼ぶ。
「アルベルト」
 整わない息のままで、ハインリヒはぼんやりとシュヴァルツをを見上げた。
 ズルリと自身を引き抜くと、ハインリヒの身体がブルリと震えた。
 肩で息をするハインリヒを見下ろしながら、
「簡単に身支度を整えろ。・・・自宅まで送ってやる」
 そう言うと。
「は……い」
 ハインリヒは気怠げに身を起こした。
 そして散らばる服を拾って身につけ、隙のないとまでは言わないまでも、そこそこ身支度を整えた。
 その様子をどこか愛おしげに見つめながら。
「・・・お前の今の状態では、電車は無理だな。私の車を出す。社の正門前で待っていろ」
 一分の隙も無く身支度を整え、シュヴァルツはハインリヒに背を向けた。
 ハインリヒの視線を背中に感じながら、シュヴァルツは車庫へ・・・。

 そして、オフィスの灯かりが落ちた。
 扉を閉める音。大きな吐息。
 カツカツという足音が、大きく、誰もいない廊下に響いた。



  〜END〜






◆コメント◆

なんとなんと!
44なりチャは、6時間の長丁場でございました。
Chihayaさま、お付き合いくださった皆様、ありがとうございました〜v
自分の担当が黒4だったので、黒4視点です。
Chihayaさまのハインは本当に手強かったです!




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