いつもと同じように残業をし、島村と2人きりになるのもこれが初めてではなかった。
違ったのは、社員全員が帰った後、島村自ら守衛室に「見回りはいらない」と電話をした事だった。
帰宅準備をしていたハインリヒが不思議に思い尋ねると、島村は今まで聞いたこともない声色で「ボク達の時間が始まるからね」と答えた。
『お題06:残業』
(94)
「ひょっとして、もう終わりだとか思ってる?」
荒い息を整える間もなく驚きの視線を返すと、高揚した顔に笑みを浮かべた島村が映る。
机上で組み伏せられたまま、笑顔の中にも反論も抵抗も許さない強い視線に見下ろされると改めて身に起こっている現実に体が強張った。
「し・・・島村っ!」
「嫌だなぁ。こんな時ぐらい、昔みたいに名前で呼んでくれよ。ジョーってさ?」
「バカなっ・・・!」
僅かに身動ぎするだけで、まだ体の中に咥えたままのジョーを感じる。
一度達したはずのソレは弱まる事なくハインリヒの中で存在を示していた。
「まだ、これからだよ?」
くすっと嗤うと、島村は耳朶に唇を寄せて軽く歯を立てた。
それだけでハインリヒの内壁が、軽く島村を締め付ける。
「・・・んっ」
「キミは本当に反応がいいね」
耳元で囁かれ、ハインリヒの体温が上がる。
そんな反応を楽しむかのように、島村は小さく喉を鳴らしながら
だらしなく開らかれたシャツの中へと手を伸ばすと、白い肌を撫で上げた。
手の平が触れるか触れないかの感覚に、ざわりと肌が粟立つ。
「っん・・・あぁ・・・っ」
乳首に歯を立てると、噛み締めていた唇から甘い声が漏れた。
自分の甘声が耳に入ったのか、緩慢に頭を振ると島村の頭をどけようと手が伸びる。
それが島村を焚きつける事となり、ますます執拗に音を立てながら胸元に刺激が加えられた。
舌で転がしながら、もう片方は指の腹で捏ねると、ハインリヒの体が小さく跳ねる。
島村は、その度に自身に力が戻るのを感じていた。
「相手が社長とかなら、ボクも黙って見てるつもりだったんだけどね」
ゆっくりと腰を揺らし始めながら、島村が落ち着いた口調で言葉を落とした。
「な・・・何を・・・っは」
痺れるような胸元の刺激から、ハインリヒの意識は下腹部へと移る。
振り降りた言葉に答えようと口を開いても、大きく乱れた息の合間から紡ぐことしかできなかった。
島村はハインリヒの言葉を拾うわけでもなく、徐々に腰の動きを大きくしながら話を続ける。
「新入社員のジェットだなんて、ボクのプライドが許さないんだ」
「・・・ぁあ・・・関係・・・な・・・」
一度力を失ったハインリヒ自身も、与えられた刺激に反応し触れてもいないのに力を持ち島村がそれを手に収めて、軽く手を上下するだけでゾクリと疼きが全身を覆う。
ハインリヒは、体の中と外からの刺激に簡単に限界を感じていた。
「ボクを甘く見ないでよ。キミとの付き合い何年になると思ってるんだい?」
「っん!・・・ん・・・う・・・ふぁっ・・・」
手の中で十分に昂ぶり、簡単に頂上を極めようとするのを根元をきつく抑え込んで阻まれ、ハインリヒは焦点の合わない視線で睨みつける。
そんな視線を楽しむかのように受け止めると、島村は薄い笑みを浮かべて見下ろした。
既に机上の書類は足元に落とされ、何もない机の上を彷徨っていた腕が島村の手から自身を解放させようと向けられるが、簡単に払われてしまう。
「ほら、キミの体だってボクを覚えてるじゃないか」
「ちが・・・っ・・・ぁあっ!」
空いた手で片足を持ち上げて深く刺激を与えると、大きく喉を反らして応えた。
「ここがいいんだよね」
じわりと一点を擦り上げると一際甘美な声が上がり、自然とハインリヒも腰を浮かせ自ら求めるように動かし、快楽を強請る。
「っ・・・島・・・む・・・っん・・・もぅ・・・」
「"ジョー"だろ?ちゃんと言ってくれなきゃ、このままだよ」
根元を握る手に力が込められ、快感の淵から現実に戻される。
頭を振って島村を力なく睨むが、潤んだ瞳では島村を煽るだけだった。
その間にも、腰の律動は止まる事なくハインリヒを深く責め立て吐き出せない焦燥感に追い立てられる。
「ぁっ・・・も、いき・・・い・・・ジョー・・・」
いつの間にか机の端を握り締めていた手を島村に伸ばし、求まれた言葉を絞り出すと島村は満足そうな顔を浮かべて解放し、より深く腰を突き上げる。
激しく揺さぶる島村から与えられる刺激に、ハインリヒは熱く駆り立てられ全身を襲う快楽の頂点を、島村と共に嬌声をあげて迎えた。
「ごめんね、アルベルト」
ハインリヒの額に張り付いた髪を手で払いながら、島村は頬に口付けを落として呟いた。
「何に対する謝罪だ」
吐き捨てるようにひとりごち、気怠い体を起こしたハインリヒは
床に散らかった書類を片付ける島村を横目に、乱れた服を直す気にならぬままタバコに火をつけた。
「室内禁煙だよ」
「嫌煙者もいないのに、構わんだろ」
足元から届く声に投げやりに答えると、人影のないオフィスをぐるりと眺めた。
蛍光灯が明るく照らす室内は、昼間と違い静まり返っていてその静寂を肌で感じると、先程までの行為と自分が発した声が蘇ってくる。
さぞかし響いた事だろうな・・・と他人事のように思いながら、ぼんやりと視線を泳がせその眼がジェットの席に留まった時、ハインリヒは小さく溜め息をついた。
〜END〜
◆コメント◆
設定見た瞬間、浮かびました
い、いちおー愛はあるんですが・・・ごめんなさい(脱兎
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