『お題12:出張』
(74+44)






「アルベルト。明日は、私と一緒に出張に行ってもらう。社長は了承済みだ。詳しい説明は・・・」
 部下のアルベルト・ハインリヒを、急な出張に連れ出した。


 出掛けた先は、某高級ホテル。
 その一室で、二人は客人を待った。

「課長。今回の出張は、得意先のミスターグレートの商談、と聞いていましたが、間違いありませんか?」
「ああ、間違えない。昨日言って置いた通り、お前には我が社の例の新製品の説明をしてもらうから、そのつもりでな」
「分かりました」
 鞄から資料を取り出し、ハインリヒが商談の準備を始めた。
 グレート・ブリテンは、(株)ブラックゴーストの得意先の重役である。
 この度、新製品についての説明をするために、貴重な時間を割いてもらい、このホテルでの会見に漕ぎ着けたのだ。
「アルベルト。今回の任務、失敗は許されんぞ」
「重々承知しています」
 白い頬に緊張の色を浮かべながら、ハインリヒが頷いた。
 しかし、シュヴァルツは少しも心配などしていなかった。
 ハインリヒの存在だけで、今回の会合は首尾よく終わることだろう。
 心の中でそう考え、シュヴァルツはその頬に微かに笑みを浮かべた。



 来客は、少し遅れて約束の場に現れた。
「お久し振りです、ミスターグレート」
 座っていたソファから立ち上がり、シュヴァルツはグレートに歩み寄った。
 上品な雰囲気を身に纏った初老の男性が、にこやかに笑いながらその手を取った。
「やあやあ、シュヴァルツ君!最近見限られたのかと淋しい思いをしていた所だ。元気にしていたかね?」
「お陰様で・・・」
 客人に対して微笑みかけながら、シュヴァルツはハインリヒに向かってスッと腕を伸ばした。
「ミスター。紹介させていただいて、宜しいでしょうか?私の部下の、アルベルト・ハインリヒです」
「初めまして。アルベルト・ハインリヒと申します、ミスターグレート」
 瞳を細めて、グレートがハインリヒを見つめる。
 いい反応だとシュヴァルツは思った。
「ハインリヒ。今日は非公式の会見ではあるが、ミスターに我が社の新製品のご案内を」
「はい。それでは始めさせていただきます」

 一通り製品の説明が終わると、グレートはもっともらしく頷いて見せた。
「製品については、あい分かった。しかし、製品をセールスしようとする君達の熱意をもう少し見せて欲しいものだが・・・?」
 どこか醒めた紅の瞳で、シュヴァルツはハインリヒを見つめた。
「・・・ハインリヒ」
「・・・・・・」
 一瞬の沈黙の後。
 意を決したようにソファから立ち上がり、ハインリヒはグレートに手を差し出した。
「ミスター。我が社の熱意を、是非ご覧いただきたいと思います」
「君が?」
「はい」
 いつの間にか立ち上がっていたシュヴァルツが隣室へのドアを開き、グレートを誘った。
「どうぞごゆっくりとお楽しみください。私はこちらで待たせていただきます」
 深々と一礼するシュヴァルツの前を、グレートとハインリヒが通り過ぎ。
 ドアが、静かに閉じられた。




 カップに新しい珈琲を注ぎ、シュヴァルツはその香りを楽しんだ。
 ここまで持ち込めば間違いなく、商談は成功だ。
 そして、シュヴァルツは待った。

 隣の部屋からは、途切れ途切れにハインリヒの喘ぎ声が聞こえてくる。

 その声を聞きながら、スーツの内ポケットから煙草を取り出し、口に銜えた。
 褐色の指先が銀色のジッポに火を灯し、その炎を煙草に移す。
 紫煙を吐き出しながら、シュヴァルツはゆったりとソファに身を沈めた。




 カタリ。

 二つの部屋を隔てていたドアが、小さな音を立てて開いた。

 一分の隙も無く身なりを整えた状態で、ドアの影からグレートが姿を見せた。
「君達の熱意は充分に見せてもらったよ。社に戻り、新製品の導入を検討しよう」
「ありがとうございます」
 穏やかに笑いながら、グレートは部屋の出口へと歩を進める。
「ミスター。もうお帰りですか?」
 尋ねるシュヴァルツに、
「見送りは、部屋の出口まででいい。君も言っていただろう?今回の会見は、非公式なものだとね」
 言いながら、グレートはクルリと手にしたステッキを回した。
「了解しました」
 ドアの前までグレートを送り、シュヴァルツは礼儀正しく一礼した。
「本日は貴重なお時間を頂戴しまして、ありがとうございました、ミスター」
「・・・シュヴァルツ君」
「は?」
「君はもう、我輩の担当から手を引いてしまうのかね?」
 シュヴァルツは答えた。
 口唇の端を上げて、笑いながら。
 それはかつて、この男に好きだといわれた事のある笑い方だった。
「ミスターが望んで下さるのなら、何時いかなる時でも、馳せ参じますよ。私もまだまだ、現役ですから」
「それは良かった」
 ニコニコと笑いながら、グレートはその場に立ち止まる。
 彼が要求しているのが何かを敏感に察して、
「またお会いできるのを楽しみにしております」
 ほんの少しだけ身を屈めたシュヴァルツの口唇に、薄い口唇が重なった。
「うむ。それでは、また・・・。ハインリヒ君にもよろしく」
「お気を付けて」

 にこやかに上客を送り出した後、シュヴァルツは小さく息を吐いた。
「商談は、成立だ・・・」




 部屋の中に戻ったシュヴァルツは、そのままベッドルームへと足を運んだ。
 真っ白なシーツの中に白い裸体が浮かんでいる。
「アルベルト」
 細い身体が、微かに身じろいだ。
「・・・課長・・・?」
「商談はほぼ100%成立だ。よくやったな。褒めてやるぞ」
 腕を伸ばしクシャリと銀の髪を撫でてやると、迷惑そうにその眉を顰め、そのままうつ伏せた。
「・・・・・・・・・」
 その様子を見て、シュヴァルツはニヤリと笑い。
「大分、良くして貰ったようだな・・・」
 褐色の指で、ハインリヒの蕾を嬲った。
 中に放たれた白く濃度の高い液体がシュヴァルツの指に纏わり付く。
 そして、ハインリヒの内部も誘うように絡み付いてきた。
「んん・・・・っ!」
 白い身体が、跳ねた。
 指の本数を増やしていきながら、
「アルベルト」
 耳元に息を吹きかけるようにして名前を呼ぶ。
 それだけでハインリヒの身体が高潮するという事を、シュヴァルツは知っていた。
「・・・一晩たっぷりと・・・。可愛がってやるぞ、アルベルト」
 濡れた瞳がシュヴァルツを見つめ。
 口唇から吐息が零れ、ハインリヒは観念したかのように瞳を閉じた。

 白い身体を組み敷き、貫く。
 薄く開かれた口唇からは、絶え間なく声が漏れる。
「あ・・ああ・・・」
 ニヤニヤと笑いながら、シュヴァルツは腕の中で乱れるハインリヒを見下ろした。
「気分はどうだ?ん??」
 尋ねると、ブルブルと首を横に振る。
「フン。相変らず強情だが・・・そのような態度は、私を喜ばせるだけだぞ?」
 長い指先で、ハインリヒの先端を掠めるように触れる。
「やめ・・・っ!」
「そろそろイきたいだろう?」
 意地の悪い笑いを頬に浮かべながら、シュヴァルツはハインリヒの身体を揺らした。
「はぁっ・・・ぁああ・・・や・・・!かちょ・・っ・・・」
「フ・・・」
 欲情の光を灯した瞳に、低く、笑いを漏らしてしまう。
「イきたい時は、名前を呼べと教えたはずだが・・・?」
「しゅ・・・」
「ん?どうした、アルベルト?」
「シュヴァルツ・・・」
 紅の瞳を細め、シュヴァルツはハインリヒに口付けた。
「いい子だ。・・・私の・・・アルベルト・・・」
「んっ、は・・んんん〜っ!!」
「アルベルト・・・」
 腕の中の身体が弛緩し、白濁した液体が二人の腹を濡らした。
 シュヴァルツもハインリヒの内部に、その欲望を散らした。

「はあ、はあ・・・」
 肩で息をするハインリヒの薄い桜色に染まった裸体は、ひどく魅惑的で。
ハインリヒの中に入ったままのシュヴァルツ自身が、すぐに力を取り戻す。
「ククク・・・」
 楽しくてたまらないといった風の笑いが、シュヴァルツの口唇から漏れた。
「もう終わなどとは言うまいな、アルベルト?夜はまだまだ長い。引き続き、楽しませてもらうぞ?」
「・・・あなたに何を言っても・・・無駄・・・でしょう・・・?」
 非難めいた眼差し。
「私はお前の、その気の強い所も気に入っているのでな」
 深く、穿つ。
「あっ・・・ああ・・・」
 再び快楽の波に溺れ始めるハインリヒの姿に。
 シュヴァルツはこみ上げてくる笑いを抑えきれず。
 愛おしげに汗ばんだ額にキスを落とした。
 そして十二分に、部下の身体を堪能する。


二人の夜はまだ・・・。




  〜END〜






◆コメント◆

(株)BG社の新製品ってなんでしょうね(笑)。
思いつかなかったので、「新製品」という風に誤魔化してしまいました。
出張プレイで74で44!!
と思い、書きたい事を書いたはずなのですがどことなく消化不良です。
思ってたより大人向けっぽくなりませんでした・・・(汗)。



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