『お題13:接待』
(74)
「構いません。私が運転しましょう」
シュバルツはそう言うと、さっさと運転席のドアを開けた。
「課長、運転なら俺が……」
ハインリヒがそう言うと、シュバルツは眉をひそめ、それから唇の端だけで笑った。
「馬鹿を言え。お前は酒を飲んでる。
それに……グレート氏は、お前との会話を楽しみたいだろう」
ねえ、というように、シュバルツは二人の会話を目を細めて眺めているグレートに同意を求めた。
グレートはふふ、と楽しそうに笑い、ぽん、とハインリヒの肩を叩いた。
「私はシュバルツ君との会話も楽しいんだが……そうだな、今日は彼の話を聞きたいねえ」
商談を交えた食事の終わった後、さて帰ろうと車へ戻ると、グレートの車の運転手が、急な腹痛を訴え、病院へと運ばれていってしまった。
困ったね、これからこの車で箱根の別荘まで行くつもりだったんだが、と呟いたグレートに、シュバルツは車の運転を買って出たのだった。
「助かるよ、シュバルツ君。もし君たちさえよければ、箱根で一泊していきたまえ。どうせ部屋は余っているのだから」
シュバルツは運転席から振り返り、グレートに含みのある笑顔で「ありがとうございます」と反した。
「ハインリヒ君も、大丈夫だね?」
にっこりと人のよさそうな笑顔で問い掛けられ、ハインリヒは固い表情ではい、と答えた。
元より、何を申し付けられても逆らえるはずがない。
車は音もさせずに滑らかに走り出した。
「君は生まれもこちらかね?」
「あ、はい」
「じゃあ、ご家族と暮らしているのかい?」
「いえ、一人です」
「そうか。たまには親御さんに顔を出してあげたりしているのかい」
「いえ、両親はもう……」
「ああ……すまないね、悪いことを聞いた」
「いいえ、そんな」
「恋人は?」
「……いません」
世間話を装った身上調査のような会話に、ハインリヒの手のひらに、じっとりと汗が浮かんだ。
「シュバルツ君、こんな青年に恋人がいないなんておかしいじゃないか。仕事ばかりさせてないで、彼に素敵な女性と出会う時間を作ってあげなくては」
シュバルツがミラー越しに自分を見たことをハインリヒは感じた。
「そうですね……反省します。でも彼はこの仕事が大好きのようですから」
「いかんねえ。それはそれ、これはこれ、だよ。上司たるもの、部下の本当の幸せを願ってやらなければ」
グレートの言葉にシュバルツは苦笑すると、ギアの横にあるボタンを押した。
運転席と後部シートの間に、薄いガラスがせりあがる。
『すみません、これ以上怒られてしまうのは適いませんので……』
スピーカーから、シュバルツの声が流れた。
『ごゆっくり』
やれやれ、と苦笑つつグレートは、それでも楽しそうにハインリヒの方へと向いた。
「箱根へは行ったことは?」
「学生時代に、一度」
「いいところだよ。君さえよければ一泊と言わず、週明けまでいてくれても構わない」
その別荘には自家露天風呂があるんだ、と言い、グレートはハインリヒの太腿に手を乗せた。
すい、とすべるように足を撫でる。
「……!」
その手はわざとらしくも局部を避け、ハインリヒの腰に添えられた。
スーツの裾をゆっくりとまくり、わき腹へと手が伸びたとき、ハインリヒの口から思わずため息のような声が漏れた。
「無理強いは趣味じゃないからね……嫌なら、抵抗してくれて構わないんだが?」
そう言いながらもグレートは有無を言わせぬ雰囲気で、ハインリヒに口付けを落とした。
ぴちゃ……くちゅ、くちゅ……。
ひっきりなしに続く水音と、かすれた甘い吐息が、車内に響く。
グレートはくつろげた自分自身を咥えるハインリヒの髪の毛を梳くように撫でた。
「ん……」
「……君は、髪の毛まで感じるのかい?」
面白そうに言ってグレートはハインリヒの耳の中に指を突っ込む。
「んん……!」
ぴくんと体を跳ねさせ、ハインリヒがうめいた。
「かわいらしいねえ」
体勢はそのままに腕を伸ばし、グレートはハインリヒのものへと触れた。
すでに形を変えているそれを確認し、グレートは声を出さず笑った。
「咥えてるだけでこんなにさせるなんて、君は本当に……」
淫乱なんだね、と囁かれ、ハインリヒは小さくかぶりをふった。
何が違うものか、とグレートはハインリヒのベルトを外し、下着の中へ手を入れ、ハインリヒ自身を直に掴んだ。
「や……あ……」
逆手に握りながら、前後に扱くと、ハインリヒの腰が円を描くように揺れる。
「正直になりなさい、ハインリヒ君」
強弱をつけながら握られ、扱かれ、撫でられ……。
「い……ああ……っ……は……
ハインリヒはたまらず声を漏らす。
「こちらをさぼっては、いけないよ」
グレート自身から口を離してしまったハインリヒの頭を、グレートは空いたほうの手でぐい、と押さえつけた。
ぐちゅぐちゅ、とわざと音を立てるように先走りの液を絡めながらグレートの手はハインリヒを嬲る。
ハインリヒがグレートをしゃぶる音と、グレートがハインリヒを扱く音があわさり、ハインリヒの聴覚を刺激する。
「んん……!」
ハインリヒがグレートを咥えたまま一際大きなうめき声をあげて放出すると、出したものを手のひらで受け止めたグレートが微笑む。
はあはあと肩で息をするハインリヒの目の前に、グレートは白いもので汚れた自分の手を差し出した。
「……君が汚したんだ。綺麗にしてくれないと困る」
自分自身の出したものを見て羞恥に染まりながらもハインリヒは、ゆっくりとグレートの骨ばっていて細い指と、弾力のある手のひらに舌を伸ばした。
ぴちゃぴちゃと音をたて、ハインリヒは綺麗にグレートの手のひらに広がる白い証を舐めとった。
「……よくできました」
後でうちの温泉で、君を綺麗にしてあげるよ。隅々まで。
耳元で囁かれたグレートの言葉にハインリヒはめまいを感じた。
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