『お題15:乱れたネクタイ』
(94)
「あ、ハインリヒ!丁度いいところにいた。ちょっと一緒にきてよ。」
朝会社に出勤し、鞄を自分の机の上に置いたところ、そんな風に言った島村に問答無用に腕を引かれ、
ハインリヒは廊下へと連れ出された。
「オイオイ、朝っぱらから何だ?」
だからハインリヒはそう尋ねたのだが、島村はちょっとね、なんていいながらぐいぐいとハインリヒを引っ張っていく。
そしてやがて連れてこられたのは会社の中でもあまり使う人がいない男子トイレ。
「?一体何・・・!」
洗面台の前まで連れてこられたハインリヒは、ようやく足を止めた島村に対してそう尋ねようとしたのだが、
その前に掴まれたままだった腕を引っ張られて、島村の腕の中へと倒れこんだ。
「オイ・・!」
だがハインリヒの言葉は唇を重ねてきた島村の中へと飲み込まれてしまう。
「んっ・・・ふっ・・・。」
そして差し入れられた舌で口内を深く探られながら、スラックス越しに自分自身を撫でられて
ハインリヒの体からは力が抜けていってしまう。
「はっ・・・一体何を・・・。」
ようやく解放され、ハインリヒはそう言ったのだが、その頃にはしっかりと島村に縋っていないと立っていられないような状況で
そんなハインリヒの様子に島村は笑みを浮かべて告げた。
「いや、実は昨日の夢に出てきた君があまりに色っぽく喘いでくれるから、朝こうして君会う前から
もう君の事を抱きたくて抱きたくて仕方なくて・・・。だからちょっと付き合ってよ。」
そして島村は洗面台にハインリヒを押し付けるようにしながら、ハインリヒのベルトを外すと
下着ごとスラックスを膝まで下ろしていく。
「オイ、何をバカな・・。大体もう朝礼が始まってしまうだろ?」
島村の行動にハインリヒは慌ててそういい募るが、そんなことを島村が構うはずもなく
体をひっくり返されて洗面台に掴まる羽目になる。
「朝礼には確かに遅刻しちゃうけど、始業時間に間に合えばいいだろう?
君が早く終わるように協力してくれればそれも可能だよ。」
島村はそんな風にハインリヒの耳元で囁くと早々に辿り着いたその場所に指を沈めようとする。
「いっ・・・そんな無理っ・・・。」
無理矢理に押し込まれた指にハインリヒは思わずそう返すが、しかし島村がやめる気配はない。
「大丈夫、君の体は君が思っている以上に淫乱なんだから、これくらいで無理なわけないよ。」
そんなセリフを囁きながら、更にハインリヒの内部を探る指とは反対の手でハインリヒ自身を捕らえると
愛撫を施していく。
「あっ・・・はっ・・・。」
その直接的な刺激に否が応でも体は反応してしまい、やがてその先端から先走りを溢れさせるようになるまで
たいした時間はかからなかった。
「ほら、大丈夫だろう?」
そんなハインリヒの様子を感じ取って、島村は笑みを投げ掛けると差し入れていた指を増やしていく。
「んっ・・・・あっ・・・。」
そしてある一点を何度もしつこく攻め立てると一際ハインリヒの口からは甘い声が漏れ、
たまらないとばかりに自然に島村の指の動きにそって腰が揺れた。
「どう、気持ちいい?」
島村は更にそんな風に言ってハインリヒの耳朶を舐めあげながら、ハインリヒ自身の先端を撫で回して煽る。
「あっ・・・もうっ・・・。」
そして限界を感じたハインリヒが達しようとするが、しかしそれを阻んで笑みを深める。
「そんな一人でいかないでよ。僕も気持ちよくさせてくれなきゃ。」
島村はそう告げるとハインリヒの中に沈めていた指を減らして、その周辺をゆっくりとなぞる。
「んんっ・・・。」
そんな焦らしに快楽の波に溺れていたハインリヒは、すぐに島村の期待通りの言葉を吐いた。
「あっ・・・早く・・早く、入れて・・・。」
そして腰を揺らめかせるハインリヒの姿に満足して、島村はすっかり昂ぶっていた自分自身を取り出すと
ゆっくりとハインリヒの中へと入り込んでいく。
「ああっ・・・はっ・・。」
それにあわせて漏れるのはもう歓喜の吐息で、島村は再びハインリヒの耳元で囁きを落とす。
「そんな風に素直に喜んでくれるのは嬉しいけど、あんまり大きな声出すと誰かが来ちゃうかもね。」
「!」
その言葉に顕著に反応して、ハインリヒの体は一瞬強張った。
しかしそれもすぐに律動を開始した島村から与えられる快感に溶けていってしまう。
「はっ・・・んっ・・・。」
ただ声だけは一生懸命押し殺そうとしているようで、そんなハインリヒに笑みを浮かべずにはいられず
次第に島村は動きを速めていく。
更に空いているほうの手でハインリヒのネクタイを緩めると、現れたうなじを強く吸い上げてキスマークを残す。
「あっ・・・もうっ・・・。」
そしてやがて限界を訴えてきたハインリヒに、しかし更に一つ要求を述べる。
「イきたい?」
「んっ・・・うんっ・・。」
「じゃあイきたいって言って。」
「なっ・・・はっ・・・。」
「言ってくれないと僕だけイっちゃうよ?」
言いながら本当に自分だけでも極まろうとするかのように殊更腰の動きを速めると、
慌てたハインリヒが喘ぎながら告げる。
「あっ・・・イっ・・イきたいっ・・。」
「・・・よく出来ました。」
そんなハインリヒに満足して、戒めたままだったハインリヒ自身を解放すると同時に一際深く突き上げると
島村は全ての欲をハインリヒへと注ぎ込み、そしてハインリヒ自身も達して床を濡らした。
「さて・・・。」
それから手早く身支度を整えた島村は満足そうに、まだ放心状態のハインリヒに笑みを浮かべると告げる。
「朝からご馳走様。これで今日は仕事をいつも以上に頑張れるよ。じゃあまた後でね。」
そして早々に島村は出て行き、それを呆然と見送りながらもやがてハインリヒも体を起こすと身支度を整える。
それからふと事の最中には決して見ることのなかった洗面台の前の鏡に移った自分自身を見つめる。
その頬はまだ先ほどまでの情事の余韻から冷めていないようで、ほんのりと赤く染まっていて、
思わずそれを振り切るように顔を水で洗ってからふと気付く。
視界に入ったのは緩められたネクタイと、そのワイシャツの襟に隠れるか隠れないかという
微妙な場所に記されたキスマーク。
それを振り切るように一番上のボタンまできっちり留めるとネクタイをきつく締めなおす。
そして乱れたネクタイ姿で繰り広げた、先ほどまでの情事を吹っ切るかのように廊下へと踏み出すと
ハインリヒは自分のデスクを目指して歩き出した。
時刻は始業時間まであと数分。
ハインリヒにとって長い長い一日がまた始まろうとしていた。
〜END〜
◆コメント◆
94は苦手と常日頃は言っているのにこの有様。
しかし『乱れたネクタイ』というのを拝見してから
ずっと挑戦したかったので今回こうして参加できて嬉しい限りです。
少しでも楽しんで頂けたのならよいのですが・・・。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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