『お題18:コミュニケーションビデオ「同僚編」』
(94)






 朝の研修室。
 そこに入ってきた自分物の姿に、新入職員たちはざわめいた。
 いつもならば、現れるのは物腰柔らかな白銀の髪の男性だ。
 しかし。
「新入職員の諸君。ようこそ我が社へ。本日は教育担当のアルベルト・ハインリヒが火急の用で外出しているため、社長の指名を受け、この私がお前達に講義を行う」
 その人物は、ハインリヒと同じ白銀の髪で、顔も良く似ている。
 だが、身に纏う雰囲気は、正反対と言ってもいいぐらいだった。
「自己紹介がまだだったな。私はシュヴァルツ。営業第一課長だ。いずれ、お前達ともどこかで一緒に仕事をするかも知れんな」
 何処か不遜なその態度。
 (株)BGの出世頭と言われ、将来は社長の椅子を嘱望される遣り手の営業課長のシュヴァルツであるが、入ったばかりのひよっこ共がそんなことを知るはずもなく。
「すげ・・・カッコイイ・・・」
 とある一人がそう漏らすと、シュヴァルツは片頬を上げて笑い、口を開いた。
「企業戦士としての心構えや職務に必要な知識などは、ハインリヒがお前達に教えているところだと思う。私は今更、お前達に難しい話をするつもりはない。今日は簡単な話をするので、リラックスして聞くように」
 シュヴァルツはホワイトボードに大きく、『コミュニケーション』と書いた。
 流麗な文字で。
 そして、新入職員に向き直った。
「企業戦士としてではなく、生きていく上でも大切な技術の一つだ。人に対する思いには3つあると私は考える」
 ホワイトボードに、また文字が書き込まれた。
 『好き、嫌い、無関心』
「好きな人間に対しては、自分も好かれたいという思いから、適切に接することが出来るだろう。無関心に対しても、それなりに割り切った付き合いが出来るな?大切なのは、嫌いな人間に対する心構えだ」
 シュヴァルツの手の平で、教鞭が踊った。
「良いか。嫌いな人物に対して程、丁寧であれ。私は、これをお前達に教えておく。下手に反感を買うな。歯向かうな。そうすれば、『はい』と『いいえ』で済む場合も多い」
 ニッ、と。シュバルツは笑った。
 そして再度、皆を見回した。
「話は変わるが、今年もものの見事に男性職員ばかりの採用か・・・。この場に集っているお前達は、所謂『同僚』というワケだが、同僚とも上手く付き合って行けんヤツは、出世の見込みはないぞ。先ほどの私の話も参照し、嫌いな同僚とも上手く付き合いなさい」
 シュヴァルツが手元のリモコンを手にすると、シュルシュルとスクリーンが下りてきた。
「話ばかり聞いていても、つまらなかろう。今から、お前達にビデオを見せる。参考にしなさい」
 研修室の明かりが落ち、スクリーンに画面が映し出された。



『コミュニケーションビデオ 同僚編』
 というタイトルと共に。
「ハイ〜ンリッヒ〜vvv」
 栗色の髪の青年が、画面に現れた。
 その頬に、満面の笑みを浮かべている。
 『営業部営業二課 島村ジョー』と、テロップが入った。
「ねえねえ、ハインリヒ。今日の業務が終わったら、一緒に飲みに行こっ!!」
 ジョーを振り向いた人物は、新入職員達にもおなじみの・・・。
 『社長付(営業一課兼務) アルベルト・ハインリヒ』
「ああ、ジョーか。おはよう。今日も元気だな」
「うん!おはようv」
 『挨拶は心の窓です。爽やかな挨拶を心がけましょう』
「ねえ、ハインリヒ!さっきのボクのお誘いに対する返事は??ねえねえ!」
 『聞かれたことには、キチンと答えましょう』
「そうだな・・・。今日は午後から営業に出て、少し遅くなるかも知れんぞ。それでも良ければ・・・」
「バッチリOK!!んもう、夜中になったって、待ってるよ〜vvv」
 ニコニコと笑顔を絶やさず、ジョーはハインリヒにまとわりついた。
 『いつも笑顔で元気よく。お客様の前では、特に笑顔に気をつけましょう』
「あ、ハインリヒ。今日のネクタイ、すごくイイね〜vvv色がそのシャツに似合ってるよ」
 『良い所に気が付いたら、すぐに褒めましょう。円滑なコミュニケーションの基本です』
 ブルーのシャツに、紺のネクタイをしめているハインリヒは、照れくさそうな顔をした。
「ありがとう・・・」
 『お礼はキチンと述べましょう』
「あ、でも少し歪んでるね。ボクが直してあげるよv」
 『誰にでも親切にしましょう。味方が増えます』
「ああ、済まないな」
 ジョーの指が、ハインリヒのネクタイに伸びた。
 ネクタイの歪みを直すかと思われたその手だが。
 スルリと器用に、それを解いた。
「なっ!?ジョー!!」
「んふふ〜vイイから、イイからvvv」
「って、何がイイんだ〜!?」
 ネクタイをポイと床に放り投げ、ジョーはハインリヒのシャツのボタンを楽しそうに外していく。
「抵抗されちゃうと、ボク、燃えちゃうよ〜!?」
「・・・う・・・」
 そして、肌蹴たシャツの隙間にスルリと手を滑り込ませ、撫で回した。
「つっ・・・!ジョー!!」
「ハイハイ。大丈夫、大丈夫」
「大丈夫って、何がだ!?」
「優し〜くしてあげるよvvv」
 ニッと、ジョーは笑う。
 もはやテロップは流れることなく、ビデオは二人の世界(というか、ジョーの世界)に突入である。
「んんっ!」
「ここ、気持ちイイよねv固くなってるもん」
 左右の胸でツンと上を向いたピンク色のそれを、ジョーは丁寧に弄り回す。
「ちょっ!や・・・!!お前、ここを何処だと・・・!」
「営業部に続く廊下でぇ〜すv」
 いけしゃあしゃあと答え、ジョーは手を動かし続ける。
「・・・う・ん・・・。はっ・・・」
「イイ声v大好きだよvもっと聞かせてね」
 ジョーはスラックスのベルトに片手を伸ばし。
 もう一方の手ではハインリヒの胸元を撫でながら、慣れた手つきでそれを緩めた。
「ジョー・・・!これ以上は・・・」
 哀願するような口調のハインリヒをニッコリ笑顔で見下ろして。
「ダメ」
 無情にもジョーは、そう答えた。
 そして、立ち上がりかけているハインリヒの中心をゆっくりと愛撫した。
「やだ・・って!言ってる・・だろが・・・!!うあ・・!」
「ボクは止めるのがイヤなんだよね〜」
 軽い口調で言いながら、ジョーは胸を撫でていた手を、ハインリヒの奥に持って行き、指を突っ込んだ。
「〜っ!!やめ・・・!」
 前と後ろを同時に刺激され、ハインリヒの身体がビクリと震えた。
 ガクガクと膝が揺れる。
「立ってるの、キツイ?」
 グイと身体を押され、ハインリヒは壁に手を付くような格好にされる。
中心からは、ダラダラと液体が流れ。
 指の本数を増やされて、ハインリヒの奥がヒクついた。
「ホラ、欲しがってるv」
 嬉しそうな声と共に、カチャカチャという音。
 ジョーの熱い塊が、ハインリヒに押し当てられた。
「うぁ・・・」
 フッと、ジョーがハインリヒの耳に息を吹きかけた。
「入れるよ・・・?」
 嫌だと言う様にハインリヒが首を横に振ったが。
 ジョーは構わず、腰を進めた。
「うあぁぁっ・・・!」
 ハインリヒの薄い口唇から、高い声が漏れる。
「フフ・・・。イイでしょ?」
「ふぁっ!ああ・・・」
 壁についたハインリヒの手に、グッと力が入った。
「もっと声・・・聞かせてよ・・・」
 ジョーがハインリヒを突き上げ、ぐちゅぐちゅという音が他に誰もいない廊下に響く。
 ハインリヒの白い肌が薄い赤に染まり、柔らかな銀の髪が汗で額に張り付いた。

 ごくり。
 新入職員が生唾を飲み込む音が聞こえ、シュヴァルツは頬に薄く笑みを刷いた。

 ハインリヒは、徐々に高められていく。
「キミの中でイかせて・・・」
 突き上げながら、ジョーがハインリヒの前を刷り上げると。
「や・・・!はぁ・・っ。ああぁぁ!!」
 ジョーの手の平を、白い液体が濡らした。
 ふう、とジョーも息をつく。
 どうやらこちらも、ハインリヒの中で達したらしい。
 ハアハアと荒い息を吐くハインリヒの首筋に、ジョーはチュッとキスをした。
「すっごーく良かったよvありがと、ハインリヒvvv」
「・・・やめろって言ったろうが・・・」
 低い、ハインリヒの声。
「だって、朝からハインリヒが可愛いからいけないんだも〜ん!」
 素早く身なりを整えたジョーは、やっぱりニッコリと笑った。
「さ!早くハインリヒも服を着て。それとも、ボクが着せてあげようか・・・?」
「じっ、自分で着られる!!」
「あ、そうv」
 ジョーにジロジロと眺められながら、居心地悪そうに、ハインリヒが服を身に着けていく。
 着替え終わったハインリヒの肩を、ジョーがポンポンと叩いた。
「それじゃあ、今日も一日頑張ろう!!」
「お前の所為で、最悪な一日の始まりだよ、バカヤロウが・・・」
「ボクとキミの仲だし、イイじゃない。これからも仲良くしようね〜vvv」
「言ってやがれ・・・」
 『仲良きことは美しきかな』
 二人の後姿が遠ざかって行き・・・。
 『コミュニケーションビデオ 同僚編・完 注:この物語はフィクションです』



 パッと、研修室の明かりがつく。
 新入職員一同は一様に、ハッと夢から覚めたような表情になった。
「まあ、このビデオは一例に過ぎん。同僚ともしっかりと仲良くしろ、という話だ。お前達は、可能性を期待されて我が社に入ったのだから、これからしっかりとやっていくように。良いな?」
 まだボーっとしている一同を見回し、
「私の講義はこれで終わりだ」
 見るからに高級そうな腕時計で時間を確かめ、シュヴァルツはニヤリと笑った。
「まだ時間は早いが、人事担当には私から言っておく。この後は、お前達の自由にして構わんぞ。ではな」
 そしてシュヴァルツは、颯爽と研修室を出て行った。
 残された新入社員たちは、お互いに顔を見合わせ。
 はー。
 と、息をついた。
(ハインリヒさん、グッジョブ!まだ見ぬ島村さん、ありがとう!!)
(なんて素敵な会社なんだ、(株)ブラックゴースト!!)
 などと、彼らが思ったか否かは・・・。
 彼らにしか分からないのだった。


  〜END〜






◆コメント◆

94が書きたかったのか、黒4課長が書きたかったのか、
どっちなのか自分でも分かりません(笑)。
こんな新人研修、ちょっとイヤかな・・・?
いや、私が新人さんだったら、ハインリヒの喘ぎにハアハアですよ!?




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