練習が終わった後、二人は夜の街を歩いていた。
「あー。腹減った。板垣、何か食ってこうぜ!!お前の奢りなv」
 ニッコリと笑いながらそう言ってくる木村に、板垣もニッコリと笑みを返した。
「別にイイですけれど、何が食べたいんですか??」
「ファミレスでイイじゃん」
 ドキドキ!バースデーナイト☆なのに、この人は何を色気のない事を・・・。
 という想いが脳裏を掠めたが、板垣もあまり金を持っているわけでもなく。
「そうですねぇ」
 などと答えてしまっている自分の甲斐性の無さに涙が出そうになったが、
(ボクが出世したら、どこかの高級ホテルを貸し切って木村さんを祝って見せますから!!それまで待ってくださいね・・・!)
 そう、強く自分に言い聞かせた(夢の実現はいつになることやら・・・)。

 そのまま近くのファミレスに入り、各自思い思いの品を頼んで、他愛のない会話を交わす。
 食事が終わる頃に、板垣はウェイトレスを呼び寄せ、お茶とケーキを注文した。
 男二人の前に、ちょこんと白いショートケーキの皿と、ホカホカのお茶。
「木村さん、お誕生日おめでとうございますvvv」
「何だか照れるな・・・」
 微かに赤くなって照れながら。
「ありがとうな、板垣」
 木村は、それはそれは優しい笑みを板垣に向けた。
(落ち着け、落ち着くんだ、ボク!!)
 静かに深呼吸をし、板垣は木村のスマイル攻撃をいなした。
(ここで興奮したら、またムードがぶち壊しになってしまう・・・!!)
「いいえ。こんなトコロでのお祝いでスミマセン」
 言いながら、板垣はプレゼントの箱を木村に差し出した。
「これ・・・ボクからのプレゼントです。受け取ってもらえますか?」
「え・・・?そんなにまでしてもらわなくてイイって・・・」
 遠慮する木村に、
「でも、木村さんのために選んだんですから」
 一言そういうと、困ったように微笑んで小さな箱を受け取った。
「本当にありがとう・・・嬉しいよ」
「開けてみてくださいねv」
 木村の指先が、リボンをスルリと解き。
 箱を開けた木村は、板垣をまじまじと見つめた。
「お前・・・無理したんじゃないだろうな?」
 用意したプレゼントは、時計だった。
 たまたま足を踏み入れた店で、木村に似合いそうだと思って、買ったのだ。
「無理なんてしてません!ボクだって、ちゃんと稼いでるんですから。その時計、いつでも身に付けて、いつでもボクの事を思い出してくださいよ・・・ね?」
「・・・ありがとう」
 プレゼントの箱を大事そうにカバンに入れた後、木村は赤くなって俯き、所在なさげにケーキを突付いた。
 そんな木村の様子を、板垣はニコニコと笑いながら見つめた。
「木村さん・・・照れてます?」
「・・・うるさい・・・」



 店を出た後、板垣は木村を家まで送った。
「若い女の子じゃあるまいし・・・」
 と渋る木村に、ニーッコリと極上の笑顔で微笑みかけて、
「もう少し、一緒にいたいんですよ」
 木村はやっぱり、少し赤くなって俯いた。

 口数も少なくなりながら、二人は並んで歩く。
(木村さん・・・やっぱり、キレイだよなぁ・・・)
 ボーっと思いながら歩いていると、あっという間に木村の家の前に到着した。
「板垣、今日は本当にありがとな。嬉しかったよ」
「いいえ。ボクのために予定を空けてくれて、こちらこそありがとうございました。それじゃあ・・・」
 クルリと背を向けて帰ろうとすると。
「板垣!」
 小さく名前を呼ばれて、板垣は振り返った。
「どうかしました?」
 木村が小走りに近付いてきて、ギュウと抱きしめられた。
(え?えええぇ????)
 驚いている間に、木村は板垣から身体を離して、チュ・・・、と頬にキスをしてくれた。
 呆然とその場に立ち尽くす板垣に。
「おやすみ」
 赤い顔で口早にそう言って、木村はそそくさと家に中に消えていってしまった。

(き、木村さんからのチュー!?今のはまさにそうだよな?夢じゃないよな!?)
 板垣は、思い切りよく自分の頬をつねった。
「痛っ!」
 この痛みは現実で、よって、木村からのキスも夢ではないのだ(頬に、だけれど)。
(よーし!この調子で、来年は口唇チューだっ!!)
 グッと拳を握り締め。
 板垣はご機嫌で家路についた。

 夜空には、星がチカチカと瞬いている。
「木村さん、お誕生日、本当におめでとうございますvそして、ありがとうございましたvvv」
 ひどくイイ気分で空を見上げ、板垣は呟き。
 クスリと一人笑いを漏らした。





HAPPY BIRHTDAY 木村さん!!

HAPPY END!






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