どうすりゃいいんだよ!?
・・・目が冴えて、眠れない・・・。
『ボクが気になる人は、あなたですよ。木村達也さん』
板垣が屈託なく笑いながら告げた言葉が、頭の中でグルグルと回っている。
一体どうして、こんなことになっちまったんだ!?
オレは、可愛い後輩の相談に乗ってやろうと思って・・・。
だた、それだけだったのに!
しかもオレは男だぞ!!
バリバリの現役ボクサーでそれなりに逞しい(と、少なくともオレは思ってる)し、女のコみたいに可愛いところなんて全くないし、どうして板垣はオレなんかが気になるなんて言うんだ!?
コレは新手の嫌がらせなのか!?
そうだ、そうに違いない・・・。
一晩中考えるだけ考えて。
結局、一睡も出来なかったオレは、思いっきり睡眠不足の状態でジムに出かけた。
いつもなら心が軽いのに、こんなに憂鬱なのも板垣の所為だ。
どうやって、板垣と顔を合わそうか・・・?
気が重いながらもジムのドアを開けると、
「おう!木村か」
「よっ!」
「木村さん、おはようございます!」
鷹村さんや青木、一歩の声にホッとした。
のも束の間・・・。
「おはようございま〜す!」
一歩の後ろから、ひょっこり板垣が顔を出して。
オレは思わず、ジリジリと後退してしまう。
「よ、よう・・・」
とりあえず、不自然に見えないように挨拶を返し、オレは素早く青木の後ろに場所を移した。
「ん?どした、木村??」
「えっと・・・着替えてくるわ」
睡眠不足の所為か、はたまた考えすぎの所為か、頭が痛い。ボーっとする。
・・・板垣の所為だ。
練習に身が入らずに、会長や篠田さんに怒鳴られるし、挙句の果てにはスパーリングで。
「きっ、木村さ〜んっ!!」
「うわっ!大丈夫かよ、木村!?」
あ・・・ヤバ・・・。
なんかイイの貰っちまったみたい・・・。
スーッと、気が遠のいていく。
これで眠れるな・・・。
なんて呑気なことを思いながら、オレは意識を手放した。
ああ、これも板垣の所為だ・・・。
フッと、目を開く。
大分良く寝たような気がして、いささかサワヤカな気分だ。
「あ、良かった・・・。大丈夫ですか、木村さん?」
本当に、本当に心配そうな声。
声の主は・・・アイツだ。
目線だけを動かして、その顔を見やると。
ひどく心配そうな顔つきの板垣が、ベッド脇の椅子に座ってオレを見守っていた。
どうやら、ジムのベッドに寝かされていたらしい。
「・・・大丈夫だ・・・」
答えたが、自分でも笑ってしまうぐらい、声が掠れていた。
しかし、今ここにいるのがどうして板垣なんだ?
一方的にだと思うが、気まずくて仕方ない。
「木村さん、スパーで気を失っちゃったんですよ?」
「・・・らしいな」
オレは大きく息を吐いた。
「板垣・・・」
「はい?何ですか?何か欲しいものとかありますか?」
「何で、オレなんだ?」
もっと他の事を言おうとしていたのに、どうしてこんなことを尋ねてしまったのだろう?
けれども板垣は、ニコリと笑った。
屈託なく。
「誰にでも優しいところとか、笑顔が可愛いとか、まあ色々ありますけどね。あなただから、ですよ。あなたがあなただから、ボクは好きなんです」
・・・訳が分からない・・・。
「全然分からないって顔してますね。ま、イイですけど」
「板垣!木村はどうだ!?」
練習場の方から声が聞こえてくる。
あのがなり声は、鷹村さんだ。
「目が覚めました〜!!」
板垣は、椅子から立ち上がった。
そのまま練習場の方に行くのかと思い、オレはあからさまにホッとする。
オレを振り返り、板垣がニッと笑った。
「木村さん」
前髪をスッとかき上げられ、オレの額に、板垣の唇が触れた。
「!?」
そのまま板垣は、練習場の方に姿を消していったが。
キスされた額が、どうしようもなく熱い。
そして驚いたことに、オレは、そのキスが全然イヤでないのだ。
「木村さ〜ん!!」
「んん〜?どうだね、小者にKOされた気分は??」
「大丈夫か!?生きてるか??」
一歩、鷹村さん、青木がやってきて、急に身の回りが騒がしくなった。
板垣にチラリと視線を走らせると、ヤツは澄ました顔でオレにウインクを投げかけた。
・・・何なんだ、一体・・・。
自分の気持ちが分からない。
板垣に対して、自分がどういう気持ちを抱いているのか。
考えたこともなかったんだから、仕方ないだろ。
オレは・・・。オレは、どうすりゃいいんだよ!?
〜 続く? 〜
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「恋の罠しかけましょう」の続きにあたる板木です。
木村さんが少しヘタレててスミマセン。
これから少しずつ、木村さんが板垣くんへの愛(笑)に
目覚めていくとイイな、と思います。
原作でも、結構板垣くんのこと考えてるし、
無意識に意識してた、ってことでひとつ(笑)。
そんなこんなで、もう少し続きますvvv
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