[宮木or木宮10題]
3//前髪
「宮田ぁ」
「何ですか?」
「オレさ、なんか急に、甘いものが食べたくなっちまったんだけど??」
そう言って、宮田を連れ込んだ喫茶店。
この店のミルクレープは、木村のお気に入りの一品だ。
クレープとクレープの間に挟まった、上品な甘さの生クリームが溜まらない。
薫り高いコーヒーを飲みながら嬉々としてケーキを突付いていると。
宮田が呆れたように呟いた。
「アンタ、いつもそんなモノばかり食べてるんですか?」
「いつもは食えねえよ。減量キツイし。でも、時々食べたくなるだろ?」
「・・・なりませんよ」
ふう、と、宮田がため息をつく。
そして彼はコーヒーカップをソーサーに戻し、軽く首を振った。
「オレは、甘いモノは少し苦手なんですよ」
宮田の前髪が、揺れる。
艶やかに、光を放ちながら。
木村は一瞬、その様子に見とれた。
(ホント、キレイだよなぁ・・・)
光を零しながら、宮田の髪が流れる様が、木村は好きだった。
そしてその中に隠れている、自分を見つめて優しく揺れる瞳が好きだった。
とても、嬉しくて優しい気持ちになれるから。
「木村さん?」
「ん?」
「ボーっとしてると、コーヒーが冷めますよ」
長い前髪の中から、宮田の瞳が優しく光った。
「へへへ〜vvv」
「・・・不気味ですよ、木村さん・・・」
「いいじゃん。オレ、今、ご機嫌なんだから」
ニコニコと笑いながら、木村はケーキの攻略に戻った。
なんだかとても、幸せな気分だった。
店を出て、二人で一緒に歩く。
木村はまだ、一人でウキウキ気分だ。
「木村さん」
名前を呼ばれて、木村は宮田を見上げた。
「何だ?」
「さっきから、アンタ、おかしいですよ?」
そう言って宮田は、ほんの少しだけ表情を険しくした。
「オレと一緒にいるのに、他のコト考えるのはやめてください」
クスリ。
木村は笑った。
そんな風に、ヤキモチを焼いてくれる気持ちも、嬉しい。
「オレはね、お前のコトを考えてるんだよ、宮田」
手を伸ばして、黒い髪に指を触れる。
「お前の前髪がさ、サラッと流れる様子とか。その髪の中に隠れてる、優しい瞳とか。オレ、すごく好きなんだよなぁ。ってコト」
手首を、掴まれた。
「アンタって・・・」
あまりにもその瞳が優しくて。
木村は、ドギマギした。
「本当に、可愛い人ですね・・・」
長い指が伸びて、木村の前髪に触れた。
「でも。オレはアンタの髪やアンタの瞳の方が、ずっとキレイだと思いますよ」
髪を、ひと房掬い上げて。
宮田が、そっと口付けたのが分かる。
思わず身を固くすると、そのまま髪をかき上げられて、額にキスされた。
「宮田っ!」
こんな場所で、と非難じみた視線を送ると。
「褒めてくれた、お礼ですよ」
そう言って笑った宮田の前髪が、サラリと流れて。
優しい光が零れる。
瞳が、優しく揺れる。
その様がやっぱり大好きで、嬉しくて。
木村も、一緒になって微笑んだ。
〜 END 〜
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前髪かき上げちゅーが大好きな管理人。
お題の「前髪」を見た瞬間に、
ちゅーvだわっ!!
と鼻息荒くなりました(笑)。
木村さんと宮田くんだと、前髪長いの宮田くんなんですが、
木村さんが宮田くんの流れる前髪それに見とれたりとかしたらどうだろう?
と同時に思ったため、このようなお話になりました。
読んでくださった皆様に、楽しんでいただけたなら嬉しいのですが・・・。
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