[宮木or木宮10題]

5//どこにもいない





 鴨川を出て、新しく移ったジム。
 そこに、あなたの姿はない。
 そんな当たり前の事に、気付かなかった。
 あなたが、いない。
 突然、目の前に突きつけられた、それが現実。



 あなたの笑顔、あなたのため息。
 ちょっとした軽口や、不機嫌な声。
 全部、全部。
 俺の前から消えてしまった。
 急に、遠くなってしまったあなた。
 けれども俺は、俺自身の誇りのために、この道を選ばずにはいられなかったんだ。
 そう思っても、辛い。
 あなたがいない。
 その事実に、打ちのめされそうなほど。



 明るくて優しい声は、今、誰を呼んでいるのだろう?
『宮田!』
 その声はもう、俺を呼んでくれることはないのだろうか?
 そんなの、耐えられない。
 いつでも微笑んでいて、誰にでも優しいあなた。
 あなたの姿が視界に入らない。
 それだけで、俺は・・・どうしようもなく、切ない。



 どこにもいない。
 あなたが。
 視線を泳がせれば、いつでも瞳の中に入ってきたあなたが。

 それだけでこんなに、胸が苦しい。
 あなたに会いたくて会いたくて。
 あなたに飢えてしまう。



 あなたが・・・。
 どこにも、いない。
 ただ、それだけで。

 イライラして、淋しくて・・・。

 俺は渾身の力を込めて、サンドバックを叩いた。
 重たいサンドバックが。
 大きく、前後に揺れた。



〜 END 〜




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短いっ!!と思われたでしょうね、皆様・・・。
私もそう思いました、スミマセン。素直に謝ります。
ちょっと今、宮木スランプで、リハビリのつもりで超短編を書いてみました。
つっか、ポエマーイチローになってしまいました(滅)。
こんなんでも宮木が好きなの、私。
好きなんです〜!!!





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