[宮木or木宮10題]

8//身軽な君





 俺を覗き込むような仕草で。
 あなたは俺の周りを一周した。
「なあなあ、宮田〜」
「・・・何ですか?」
「今、機嫌悪い??」
 その言葉に、ドキリとする。
「どうしてですか?」
 努めて冷静を装いながら答えると、ニッと笑って、あなたは答えた。
「う〜ん。何となく、かな?今日、あんまり笑わねえし、不機嫌そうな顔してる」
「別に、何時もどおりですよ、俺は」
「嘘だろ?」
 この人は、本当に何でもお見通しだ。
 確かに、俺は不機嫌で。
 でもその原因は、この人にあるのだ。

 俺以外のヤツに、笑いかけないで下さいよ・・・。

 なんて、そんな理不尽な事を言えるわけがない。

 あなたは誰にでも、キレイな顔をして笑うから。
 けれども。
 その笑顔がどれだけ人を惹き付けるかを、知らないでしょう?
 あなたの周りは、笑顔で溢れている。
 微笑むあなたは、俺にはとても眩しくて・・・。

「こら、宮田」
「・・・何です?」
「ボーっとしてないで、返事は??」
「ハイハイ、どうせ俺はお子様で、ちょっとしたコトで不機嫌になりますよ」
 半ばやけくそで、そんな答えを返すと。

 ・・・そんなにおかしそうに笑わないで下さいよ・・・。

 クスクス、クスクスと、あなたの口唇から笑いが零れる。
 理不尽な怒りに駆られながら、俺はあなたに腕を伸ばした。

 抱きしめて、キスをして、黙らせてあげますよ。

 俺の手から、あなたはヒラリと身をかわして。
 ニッ、と人が悪く笑う。
「ヤダ」
「・・・どうしてですか?」
「不機嫌な宮田なんか、嫌いだから」
 サラリとそんな風に言われたら。
 俺はもう、何も言い返せないじゃないですか。

「宮田ってば、落ち込んでる??」
「・・・放って置いてください・・・」
 あなたは小さく首を傾げて。
 優しく笑いながら、少しだけ背伸びをして。
 ・・・背伸びをして??

 俺の頬に、可愛らしくキスしてくれた。

「木村さん!?」
「少しは、機嫌が直ったか?」
 再度、抱きしめようと伸ばした腕から。
 あなたはまた、ヒラリと逃げた。
「機嫌、直った?」
 そんなあなたに、俺は両手を挙げて見せた。
「降参です、木村さん」
 俺に向かってニッコリと微笑んで、あなたは不意に、立ち上がった。

「それじゃ、行こうぜ」
「は??」
「デート、デートv俺ね、デパートに服買いに行きたい。付き合ってくれるよな?」
「・・・お望みのままに・・・」




 あなたはスタスタと、俺の前を歩く。
 なんて、身軽なあなた。
 フワリフワリと、軽く歩いていくあなたの後姿を眺めていると。
 何だか、俺の心も軽くなって。

「木村さん」
 名前を呼ぶと、あなたは俺を振り返って笑った。
「少しは機嫌直ったみたいだな。声が、穏やかになった」
 あなたの言葉に、俺は・・・。
 なんだかホッとして、自然に笑顔を作ることが出来た。
 

〜 END 〜




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宮田くんからヒラリと逃げる、
という辺りが、「身軽な君」というコトで、よろしくお願いします。
宮木書くのも久し振りだ〜vvv
なかなか感が戻りませんね(汗)。




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